喜田川由美子
吉行イナ
秋の実り
喜田川由美子は凍っていた。
背中まで伸びたストレートの髪には慕うように霜が張り付いて一見したらエノキダケの塊がこびりついているようにも思えた。
その群生エノキダケ的氷塊は手足の先から頭のつむじの先までその繁殖域を広げ
喜田川由美子からさらに栄養を吸って秋の実りを天まで捧げんばかりに白々と実っていた。
皆さんもご存知のとおり 喜田川由美子は氷結した場合
東田かほるになる。内的性質はそのままにそう呼ばれることになるので
当の喜田川自身は東田と呼ばれることに違和感を持たないし
そうであることは間違いないので訂正もしない。
彼女は主張しているのではなく体現者なのだ。
ラーメンのメンマがそのポーズに誇りを持っていて
「私はこのたたずまいに人生をかけて臨んでいます」と語るのと同じく
東田もそれと同感覚の威厳を持ち合わせていた。
ちなみに東田は解凍されると喜田川に戻るわけではない。
解凍東田になるのでもなく また戻し喜田川になるでもないのだ。
そういうものなのだ。
喜田川由美子 吉行イナ @koji7129
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