第24話 依頼と作戦会議 2/2
カメラで常時下駄箱を監視して犯人の姿を収める。
これならば龍二たちが授業をサボる必要もないし、来るかどうかもわからない犯人を待ち続ける必要はない。
だが、それを聞いた三人は顔を見合わせる。
「確かに監視カメラを仕掛ければ一発だろうさ。でも肝心のカメラとかの機材はどこから調達すんだ?」
「理久の持ってるのを借りればいい。どうせ動体センサ内蔵のカメラとか魔改造で作ってるだろ」
理久はボランティア部副部長であり部内では作戦などを考える参謀的存在だ。
また様々な機械をイジるのが趣味で、帰宅すると自室として使っている蔵で毎日作業に勤しんでいる。
ただし、作る物がペットボトル爆弾など危険なものが多いというデメリットはあるが部が使用する機材関連のほとんどは理久の手が加えられているし、道具や機材が無い場合はガラクタから作ってしまうような奴だ。
そういう観点から見ると理久もベクトルは違うが優と同じオタクであったし、実際二人は仲が良く、放課後が理久の自宅で実験に付き合っている。
「とにかく監視カメラでストーカー犯の姿を捉える。そうすれば誰が犯人なのか一発でわかるはずだ」
「でも、誰に許可取るの? 無断で置くわけにもいかないでしょ?」
葵の疑問ももっともだった。
普通の生徒はカメラを設置して下駄箱を監視しようなんてことはしないし考えることもない。
かといって無断で設置して知らないうちに撤去されて盗撮だなんだと騒がれれば元も子もないだろう。
なので上の方に報告して了承を得る必要がある。
「村刀先生に言うか?」
「でも面倒の一言で一蹴されそうだよ」
「だよなぁ……。となるとあそこしかないか」
ため息をつきながら龍二が呟き、一人状況が理解できていない詩音が首を傾げた。
「あそこってどこの話なんだ?」
「生徒会室だよ。あそこはそういう許可を出す権限を持ってんだ」
六坂北高校は生徒に選択の自由がかなり委ねられており、申請さえ通ればなんでもできるのが実情だ。
そして生徒会は生徒からの要望を取りまとめて審査するため、生徒会から許可をもらうということは学校から許可をもらうことと同等なのである。
だが、それを聞いた詩音はわからないとばかりに眉を寄せた。
「じゃあなんで、そんなにも行きたくなさそうなんだ?」
よくぞ聞いてくれましたとばかりに優がニヤリとして、今度は龍二を指さす。
「龍二はそこの副会長さんが苦手なんだよ」
「苦手なんじゃない。ただ関係が複雑なだけだ」
「複雑もなにも幼馴染だろ」
ニヤニヤとした笑みを崩さず優は龍二の反論を鼻で笑う。
龍二はそんな彼に胡乱げな視線を向けるが、確実にこの状況を楽しんでいる奴にはその程度の些細な抗議は通用しない。
「そういうわけで生徒会との交渉よろしく」
「たまにはお前が行けよ」
「部長が行った方がなにかと都合がいい」
この野郎、本当にあとで覚えておけよ……。
龍二の言葉をのらりくらりとやり過ごす優に内心で呪いの言葉を吐いていると詩音がすっと手を挙げた。
「私も行く」
「おっ、やる気だな。珍しい」
「こいつがそんなに苦手な副会長さんの顔を見たくなった」
いままでそんなことを言うキャラではなかった詩音に驚いて目を向けたが、その顔には優と似たようなこの状況を楽しんでいるような表情が浮かんでいる。
「だから苦手なんじゃないって……」
ガックリと肩を落として龍二は詩音と共に生徒会室のある二階へと向かったのだ。
―――――
「そういえばその副会長さんってどんな人なんだ」
時は戻って、部室から生徒会室前に移動してきた龍二と詩音。
どんな人物がいるのか知らない詩音が龍二の背中に問いかける。
「運動もできて勉強もできる、まさに文武両道。フィクションの生徒会長役をそのまま当てはめたような奴だよ」
ついでに言えば僕の天敵だ、と龍二は内心で付け加えた。
改めて考えると、そんなのが幼馴染であるというのは現実感がまったくないものである。
「なんで幼馴染と仲が悪いんだ?」
「そこはスルーしてくれるとありがたい」
苦笑を浮かべながら龍二はきっぱりとそう言う。
幼馴染と仲の悪い理由を説明しだすとかなり過去を遡らなくてはならないので面倒なのだ。
詩音が次の投げかけてくる前に龍二は扉にそっと手をかける。
そして扉を開け、生徒会室へと足を踏み入れた。
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