万年片思い女がモテ女になったら・・・!?

@mikadukineko

第1話 パワースポットでモテ女計画

 私、真田ハルは、年齢(20)=彼氏いない歴の万年片思い女です。でも、私がモテない女だったなんて、最近初めて知ったんです。だって、今までずっと、私が好きになった人は、私の事も好きなんだとずっと思っていたんだもの。

 だけど、違ってた。

 好きになった人には、彼女がいたこともあったし、彼の告白現場を目撃してしまったこともあったわ。もちろん、告白するたびに振られてた。そして、気づいたんです。

「もしかして私、いつも片思いしていたの?」

って。

 だけど、あのセリフを一度も思ったことないことだけが、今の私の誇りよ。それは「いつか、私にふさわしい王子様が私を見つけてくれるわ」っていうセリフ。

 私は、見つけてもらうことを待っているなんてしない。自分から見つけるのよ。

 ということで、親友のスマホンことスマートフォンの紹介で、愛のパワースポットへ来ています。

 パワースポットは、とある場所にある「おモテの泉」です。

 そして今、私はおモテの泉の前にいます。もちろん、スマホンも一緒に。

「今日の記念に……」

私は、スマホン片手に満面のスマイルで決め顔。さらにポーズを決めてシャッターボタンを触ります。

 これできっと、今日から片思い人生さよならできる。そう思った矢先、カップルの一人、きらきら女がぶつかってきた。というより、突き飛ばされた。

 バッシャーーーーン!!!!

 あれよあれという間に、私はなぜか泉の中にいる。

「服が、ぐしょぐしょ」

私は髪までずぶぬれで、寒さに震えている。

 だって、今何月よ。12月だよ。雪降ってるよ。泉の水、若干凍ってるよ。

 悲しくて、泣けてきた。

 なのに、周りにいるカップルたちは、ずぶぬれの私を見て笑っている。スマホで写メってツイッターだよ。

 誰か、助けて。心で叫んでも、助けてくれる人はいなかった。



 仕方ないから、自分で泉を抜け出しました。

 凍えそうな私は、一人寂しくマンションへ帰ります。

「ああ、今日が引っ越し初日なのを忘れてた」

ずぶぬれの私は、玄関の扉を開けて、絶望します。

 こんなことなら、引っ越し屋さんに全部頼んでおくんだった。

 玄関から廊下にかけてずらっと積まれた段ボールの山を見ていたら、もうすべてがどうでもよくなってきます。

 そう、私が悪いんです。引っ越しの荷物を片付けてから、パワースポットに行けばよかったんです。そもそも、引っ越しを今日にしたのが間違いだったんです。でも、言い訳を聞いてください。

 引っ越しを決めたのは、前に住んでいたアパートが、つぶれてしまったからです。それに、パワースポットは、引っ越し先の近くにあるんです。引っ越しも、大きなものは引っ越し屋さんに設置をお願いしていました。だから、引っ越し屋さんより早く着いた私は、出かけてしまったんです。

 はい、私がばかでした。

 とりあえず私は、段ボールから着替えを出して、シャワーを浴びてから着替えます。

「はあ。生き返った」

服の温かさに心までほかほかになった私は、のんびりと壁に背を持たれて、床に座ってくつろぎます。

 ガチャッ。

 隣人が返ってきた音が、壁を伝って分かります。

「そうだった。ご近所さんに、あいさつ回りをしなさいって、言われてたっけ」

私は重い腰を上げて、段ボールにしまっていたであろう手土産を探します。

「あった、あった」

見つけた荷物を取り出して、玄関へ。

 と、ちょっと待て。今私は、すっぴんだった。

 ご近所周りの第一印象は、良くしておかなければと思いなおした私は、すぐに化粧をする。

 何を隠そう、私は美大生。自分の顔も作る、いやいや。きれいにするのも得意なのさ。

「よし、上出来」

我ながら、きれいに化粧ができている。

 これで、なぜ彼氏ができない、自分。

 玄関をでて、いざ出陣。

 さっき帰ってきた隣人の部屋の前に立って、ベルを鳴らした。

「誰?」

出てきたのは、ちょい不良系のイケメン男。と、その彼女(?)らしきキラキラ女子。通称キラ女。

「あの、今日隣に引っ越してきた真田です。これ、よかったらどうぞ」

「あ~、ども……」

このイケメン、私を凝視する。なぜだ。もしや、私に惚れたか。おモテの泉の効果か?

 なんて思ったけど、どうもこの男。見たことがある。

「あれ? お前、ハルだよね。真田ハル」

フルネームを言われた瞬間。

 うげっ!!!!

 思い出した。

「そ、そう。久しぶりだね。今日から隣に引っ越しました。これからよろしく」

私はそう言って、足早に自分の部屋に帰ります。

「マジですか~」

ドアを閉めた私は、うずくまってため息をつきました。

 まさかの人物。あのイケメンの名前は、織田ソウジ。

 幼稚園から中学まで同じ学校、同じクラス。ずっと同じだった腐れ縁男、そして私の天敵。

 高校の時にちらっと見た奴は、キラ女を何人も侍らせた無敵のモテ男。気に入った女には甘いセリフをささやき、気に入らない女には毒を吐く。そういえば、彼女ができたという話は、一切聞いたことがなかったが、あの侍らせていたキラ女たちは、なんだったのか。

 奴とかかわると、気持ちブルーになるんだよな。だって、私に対する奴の態度って、ほぼオカンなんです。

 ああ、思い出す。あの頃の闇に葬りたい思い出の数々。

「よし、忘れよう。奴とはあれ以来会ってない」

私は、すべてをなかったことにして、ご近所さんのあいさつ回りを再開しました。

 やっぱり、いろんな人がいるんだな。でも、悪い人はいなさそうだったから、とりあえず良しとしよう。

「さあ、どうぞ」

「ありがと。ソウジ」

女性をエスコートするジェントルマンソウジの図が、私の視界に入ります。

 部屋に帰るとき、奴とキラ女に遭遇とか、タイミング悪かったよ。

 内心闇を放出しながら、軽く会釈をする。

「待てよ。お前、ご飯食べてないだろ。これやるから、ちゃんと食べろよ」

「いや、そんなの良いから」

私は、キラ女が睨んでいるのに気づいて、即答します。

 ややこしいいざこざに、巻き込まれたくありません。誤解もされたくありません。一時カッコいいと思ったこともあったけど、今はオカンにしか見えませんから。

 けれど、断る私に、強引にお弁当を渡すソウジ。

「ほら、食え」

私の手にお弁当を乗せると、ソウジとキラ女は出かけて行きました。

 私はすぐに、部屋に帰って、お弁当を床に置きます。

 一度は捨てようと思ったけど、お弁当に罪はないですから。

「オカンは、健在だったかぁ」

私は一気に脱力します。

「つーか、女連れてんのに、ほかの女に、弁当渡さないでよ。助かるけど」

私は、床に置いたお弁当をもって、床に座ります。

 お弁当に、罪はない。そう思いながら、お弁当をほおばりました。

 きっと、奴はキラ女と食事に行ったのだろう。だから、自分の分に買っておいたお弁当を、私に渡したのだ。

「そういえば、あいつ。あのキラ女が来なかったら、一人でこのお弁当食べようとしてたのかな。なんか、意外。いつもキラ女侍らせてるイメージだったもんなあ。ああ、それにしても、苦労してパワースポット行ったのに、全然効果ないし」

私は、部屋の中を見渡して、ため息をつきました

「食べ終わったら、荷物整理始めるか」

 ここは、私の腕の見せ所。

 食べ終わったら、私のオアシスを作り上げるんだ。

 美大で鍛えているこの腕で、来た人があっと驚く私だけの部屋にしよう!!!!

 まあ、誰も来たこと、ないけどね。










 






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