僕と人間

歓喜の杯

第1話

僕は何処に向かっているのか?ふて腐れて寝ることにした。


目が覚めると知らない家の中だった。


知らない臭い、知らない景色、知らない人間


僕はお出掛け用の家から出るのをためらってしまう。


『花ちゃん!出ておいで!怖くないよ!』


(花ちゃんって誰の事かな?もしかして僕の事なのかな、それに何時ものご主人様と違う)


恐る恐る知らない世界に飛び込んでみる、僕にとって、生活感が変わる事はとてもストレスになる。


まず、僕の部屋は何処だ、ご飯は何処で食べる、それにトイレは何処だ。言い出したらきりがない。本当に内蔵が痛くなる。


僕が探索をしている所を先程の人間が、後を着いてきている。正直迷惑だ僕は人間に構っている暇はない。まず自分の家を探さないと、落ち着く事もできない。


探索を続けていると、目の前にまるで事前に作っていたであろう、僕が住むには最高の環境が揃っている家を見つけた。


(何だこれは!僕の縄張りを示すかの用に、周囲をフェンスで囲み、綺麗に整えられた寝床、水飲み場まであるじゃないか)


それに何と言っても広い!前の家は蛸部屋状態

だったからな、友達に見せてあげたい。 


『花ちゃんっ!おやつだよ!』


(何と旨そうなジャーキだ、よだれが止まらんぞ早くよこすのだ)   


『花ちゃん待て!だよ』  


(何だ人間焦らすとは生意気な、しかし待てとは何だ?)


僕は人間言っている意味が分からなくて考えていた。 


『花ちゃんお利口さんね!ちゃんとまてが、出来るなんて』


(ん?何かよく分からんが、喜んでるな?待てとは考えろって事か)   


『花ちゃん今度はお手!』 


今度は右手を差し出してきた。何だその手は?

そんな手食べても美味しそうじゃない

むしろこちらからごめんだ。


『花ちゃん、お手は分からないの?お手はこうやってやるんだよ』


すると人間は僕の左前足を掴み、自らの手に乗せると言う奇行をしだす。


『花ちゃん!上手!上手!ご褒美におやつあげるね』


(なんと!これほど旨いジャーキは食べたことがない!今まで食べていたのは何だったのか、おい人間もっとよこせ)


『ワンッ!ワンッワンワンッ!』


『そんなに美味しかったの?じゃあもう一回お手』


(何だお手とな、人間めそんなに僕の足を見たいのか?物好きな人間もいるようだな)


僕は自慢の前足を置く、離す、置く、って行為を何度か繰り返してやった。

何がそんなに嬉しいのか?未だに良くわからない。 


只人間は喜ばせると、ジャーキをくれるみたいだな!良く覚えとかねば。


満足したのか、人間は違う部屋に行ったみたい。


(ふん、早めにどちらが上なのか、解らせないといけないな。しかし何だこのモフモフした寝床はとても快適だぞ!この家の人間は何処からモフモフとジャーキを入手したのか?いづれ詳しくルートを探す必要があるな)

 

余りの気持ちよさに、僕は夢うつつながらも、警戒は怠っていない。 


(でも僕だけここに来てしまうとはな…他の皆はどうしてるのかな?元気にやっていると良いのだけど)


『ガチャ』


(何だ!敵襲か!!)


『花ちゃんいまからお散歩に行くよ!ちゃんと首輪も買ってきたからね!』


(何だ人間が持っているのは?)  


『花ちゃんっ動かないでね!』


(よっよせ!そんなうっとしい物つけるんじゃない!)


僕はもてる力を使って抵抗したが、人間の腕力は恐ろしい、ガッチリとホールドされびくともしなかった。


『花ちゃんお外に行くよ!』


(なるほど!今からあの、モフモフとジャーキを探しに行くのだな!良かろうあの物の臭いは把握しておる!僕に着いてこい!)

 

僕は人間と一本の紐で繋がっているようだ。


(わかったぞ、この紐はモフモフとジャーキを探すために、僕が先導をしていくって事か!なるほど人間め、脚力じゃ僕に勝てないと分かっているな。ふむふむ良かろう慣らば、僕に着いて来るがよい!)

 

僕は、颯爽と走り出した!


(どうだ人間!僕には追い付けまい!このまま引き離してやるっっっ………)


(なっ!何だと!)


僕は前に向かって走り出したはずだ、なのに突然に首を中心に衝撃が走った。まるで後ろから引っ張られているかの用に。


(何をした!人間!)

 

『こらこら!行きなり飛び出したら危ないでしょ!』  


『そう言えばトレーナーさんが散歩をやる時は、犬を先に歩かしては駄目っていってたな』


『確か主従関係がどやらこうやら』


(こいつめ、剛力で僕を引っ張りやがったな。何故だ、モフモフとジャーキを探す為に僕が先導するのではないのか!)


『ワンッ!ワンワンワンッワンッ!』


『花ちゃん怒らないの!ちゃんと私の横にいるんだよ!』


(何故だ?これでは僕が先導されている、見たいじゃないか。上の物が下の物を引き連れるが我らの掟、これでは僕が下みたいだ)


それから僕は何度か抵抗してみたものの、まるではがたたない。抵抗むなしく初めての探索は終わってしまった。


(モフモフ、ジャーキは発見できなかったか…僕が先導すれば見つけられたのに。人間と言えば只広い道をぐるっと回るだけではないか)


『花ちゃんご飯だよ!』


(なっ!何!人間そのジャーキは何処で見つけた!)  


『ワンッワンワンッワンッ!』


『お腹空いてたのね!まだ駄目だよ!』 


『花ちゃん待て!』


(まてか!確か考えれば良かったのだな。そうだな……人間は何処でジャーキを発見したのだ?道に有れば僕が気づかないはずがない。)


『よしよし!えらいわね!』


『次はお手!』


(何だ今度は奇行か?ほれ、こんな事で良ければ何度でもしてやる!)


『凄い!一日でマスターしてしまったのね!花ちゃん名犬かも!』


『はい!食べて良いよ!』


許可が出たみたいだ、しかしこの家に出てくるご飯はどれもご馳走だな! この人間は何処から持ってきている?


(しかし旨いな、旨い、旨い)


『花ちゃん綺麗に食べたわね!今日のご飯は終わりだよ』


『私は買い物に行ってくるから大人しく待っててね!』


『ガチャン』


(あの扉の先に答えがありそうだな、しかし僕では開ける事など不可能だ)


(考えろ僕…人間…)


(まず、ご飯を貰うには待てと、お手か、それから人間が良しと言えば食べて良いようだったな)


(あれっこれでは、僕がご飯を貰っている立場だ)


(この家の人間がご主人様だと…焦るなまだ結論には早い)


(そうだ、外で探索を開始した時は、信じられない剛力と紐捌きで、僕を操っていた。前のご主人様は僕らを10匹程連れて探索することもあったか、まぁそれに比べればまだまだか、しかし人間の剛力は注意するべきだ)  


(唯一違う所は、このモフモフと、ジャーキだな!これは嗜好品だ!もう無くては成らない存在になっている。これをこの家の人間は容易く入手出来るみたいだな。もしかして逆らうとくれなくなるのかな……)


(それは困る、このモフモフとジャーキを提供するので有れば、僕はこの家の人間をご主人様だと認めよう!しかし良いのか…僕は皆と別れてここに連れてこられたが、僕の友達にもモフモフとジャーキを味会わせてあげたい。)


僕が前にいた所は、とても大所帯だった、部屋は冷たく、ご飯も美味しくない、探索だって週に一回だった。


それでも僕は満足していた。たくさんの仲間達が一緒にいたからだ!寂しかったことも無い


次の日になると、行きなり仲間がいなくなる怪奇現象が多々あったが、それでも次から次に仲間は増えていく。そんな毎日だった。







『ガチャン』


『ただ今!花ちゃん!お利口さんにしてたかな?良いもの買ってきたんだよ!』


(何だ、僕は今思い出に浸ってるんだ)


『じゃじゃーん!何とプレミアムジャーキお徳用で買っちゃった!』






     (ご主人様〰️〰️〰️〰️〰️〰️!)

















『ただ今、そうそう千尋しってる?』


『お帰りお母さん』


『この前花ちゃんを連れて来た、保健所あるじゃあない』


『うん』


『花ちゃん達がいた部屋の子達、花ちゃん以外殺処分されたそうよ』

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