第35話 雨のち花の影

頭上には

重たい空

今か今か

梅雨がはやる手を伸ばす雲間


正直雨に濡れたっていいさ

ただ

切符のような

黒の折り畳み傘


なんの遠慮もなく

微かな思考もせず

受け取る

改札口は雨予報


今年、俺にうれう梅雨は

来なかった

二人分の靴音が

薄暗い夕暮れに染み込んだ


次の日も

雲の裏側で朝が来た

二人分の傘を開く音が

雨音と重なり消えた


改札口

電車

徒歩

教室


クラスメイトがざわめく

興味はなく

制服のすそは冷たく

そっぽを向く


担任曰く


「転校生だ」

間髪入れず

三沢空木みさわうつぎです」

「宜しくお願いします」


まさか

まさか

まさかどころの

話じゃない


雨は止まり

一筆の光の後に

叩きつける雨

ずぶ濡れの、、、影

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