第29話 ひとりの冬

一週間に一度が

五日に一度

三日に一度が

二日に一度


俺はろくに家にも帰らず

仙崎の部屋で

秋の終わりを迎えた


一ヶ月前に一度

冬の制服を取りに

取りに戻った

クローゼットには


制服が二着

並ぶひとつに触れて

枯れ草のように

膝が落ちる


制服の下には

黒い影

その尊さに触れられず

ひとり震える


何が正解で

何が不正解なのか

考えるのは苦手だった

だから


ひとつの制服を置き去りに


今日も

明日も

明後日も

くんだ


得るものは少なく

失うものも無い

この上ない

飢えた日々


仙崎の耳に

「お前だけじゃ物足りない」と吐く

仙崎の口は

「さすが王様」と笑みをこぼす


次の日から

仙崎だけではなくなった

冷えて渇いた

冬の始まり

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