第23話 今日其伍

世界はいつもと同じように過ぎていく

だから相変わらずつまらないテレビ

なんの役にも立たない電波

今日くらい笑えるニュースがあってもいいじゃないか


風呂に入るくらいしか思いつかない

頭からかぶるシャワー

一日中家にいた体

流れ落ちていくものを足元に見る


「瓜生、大丈夫?」

いきなり開いたドア

「なんだっ」

悲鳴に近い声を出してしまった


「いや、なんか長いから倒れたのかなって」

そんなに長く立ってたのか

「何にもない。のぞくなよっ」

今日一番の汗をかきながらドアを閉めた


頭にタオルを乗せたまま

リビングに入る

テーブルにグラスが光る

レモネードらしい


今度はあいつが消えて

シャワーの音がしてきた

考えないようにしたいのに

これが最後の音だと巡る


飲みかけのレモネードを置いて

お湯を沸かす

あいつがリビングに来る前に

ジンジャーティの茶葉を蒸す


首にタオルをかけたまま

あいつは湯気を顔にあてる

これも最後の香りだと

もやの向こう さよならの夜



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