第22話 今日其肆

夕食は冷蔵庫掃除

と言う名の最後の食事

なにがメインなのか

不明の豪華すぎるテーブル


「作りすぎたね」とあいつが

具だくさん味噌汁の椀を持ちながら言った

「明日も食べれる」と俺は

かぼちゃサラダを皿に取りながら答えた


沈黙が皿の端々からのぞく

そいつが気になって

炊飯器の方へ逃げる

「瓜生さっきの少なかった?」


こいつはそういうやつだ

わかっているはずなのに

あいつの声が沈黙以上に気になって

「いや、そうじゃない。お前もいるか?」

なんて気を散らす


あいつがいらないって言うから

また一つ気まずくなって座る

目の前には育ちざかりの子供を

見守るかのような母親がいる


そんな顔二時間前にはしてなかったろ

と思うが言えない

俺を笑う

冷め始めたクリームコロッケ


たらふく食った後の片づけ

それでもタッパーに入る

残ったおかず達

明日からはこいつらと付き合う俺


ふいに手が止まる

あいつを見る

皿が歌い

水は踊るキッチン


俺も

皿になって

水になって

あいつの指先を受け入れたら


冷蔵庫に重ねられたタッパー

俺の中に蓄積されていく

認めたくない感情達

どんどん積みあがって 揺れて 揺れる



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