第7話 空木の花

玄関を出ると待っている

あれから毎日

笑顔のストーキング


やめろと繰り返す毎日

だが、こいつは

「好きだから」

この一言でgoing my way


二人で歩く

二人で電車に乗る

二人で学校に行く

二人の日課になった


相変わらず授業はつまらない

なくなってしまえばいい休み時間

ここは居心地が悪い

さっさと帰りたい


帰りの道を二人

電車に二人

歩く二人

それぞれの家に入る二人


次の日夕方

「空木ってめずらしい名前だな」

「五月の下旬に咲く白い花です」

「ふーん、男なのにな」

「雪見草とも言って、母のお気に入りの花なんだそうです」

「へー、それを男のお前にって大胆な母親だな」

「五月二十二日の誕生花で、花言葉は謙虚です」

「親子共々謙虚だとは思えないけどな」

「そういう風に言われたのはじめてです」


そう言った空木の顔が

きっとその花より可憐に咲いていた

俺は目のやり場を

それ以外に移すしかなかった


そういえば自分から話しかけたのは

(めずらしい)

五月下旬はすぐそこまで来ていた

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