第3話 街で

太陽は消え

人は明かりを求め

偽物の夜が街を支配する


人でにぎわう駅前

スマホを眺める

画面に用事があるわけじゃない


「ねえ」

やはり声をかけられる、が

ハズレのおやじ

欲とアルコール臭でからんでくる


うざいな。趣味じゃねーよ

逃げる覚悟を決めた刹那

「ごめん。待たせたな」

腕をつかまれ引きずられ


どこぞの正義が

決まり文句で助けたらしい

お礼に体をくれてやる

俺は歩き出す


「それじゃ、足りない」と

正義はキスをしてきた


おいおい、街のど真ん中

こんなところで

男同士で

一、二、三、四、五秒

呼吸が迷子になる


「何してんだよ」

「ありがとう」

(何が?)

「心をもらった」


波打つ鼓動は

置き去りにされた


正義というのは欲張りで

自己中らしい

ただのキスされどキス

かすんだ街は二人を数えた

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