第180話:新たな住人と廻の決意

 そして、一ヶ月が経過した。

 ジーエフを離れたリッカも戻ってきており、ロンドと共に冒険者として活躍している。

 時折、宿屋の手伝いをしていることもあったが、ジーエフでは当たり前だと言われて必死に頑張っている。


 リッカが宿屋を手伝うようになってからはロンドにも時間が生まれ、アルバスと共にダンジョンへ──ではなく、換金所で仕事をするようになっている。

 物覚えが良いロンドはすぐに仕事を覚えてしまい、リリーナも加われば換金所も上手く回るようになっていた。


 ただ、そんな中でもロンドには心配事が一つだけある。それは──カナタ達と両親のことだ。

 出発してから一ヶ月以上が経ったが、いまだに戻ってきていない。

 月日が経つにつれて、何かあったのではと思うようになっていった。


「ロンド君!」


 そんなある日、廻が換金所に飛び込んできた。


「ど、どうしたんですか、メグル様?」

「か、帰って、きたよ!」

「帰ってきた?」

「うん! カナタ君達が、帰ってきたのよ!」


 その言葉にロンドは目を見開いた。


「行ってこい」

「ここは私達だけで大丈夫ですよ」


 ロンドの心情を察し、アルバスとリリーナが声を掛ける。


「……ありがとうございます!」


 カウンターを出て換金所を飛び出したロンド。

 その背中を追い掛けるようにして廻も走り出す。

 向かう先はジーエフの門。

 すでに目で見える位置まで近づいている。

 まだまだ豆粒くらいにしか見えないが、それでもロンドにははっきりと見えていた。


「……父さん、母さん。それに、アルダ!」


 カナタ達からもロンドの姿が見えたのか、カナタが大きく手を振り、トーリとアリサが家族に声を掛けている。

 少しずつその姿が大きくなると、ロンドの瞳には自然と涙が浮かんでいた。


「よかったね、ロンド君」

「はい! ありがとうございます、メグル様!」


 そして、ロンドは数ヵ月ぶりに家族と対面を果たした。


「父さんも母さんも、久しぶり。それにアルダも……みんな、痩せたね」


 ロンドは家族が生活に困ることのないように結構な額の仕送りをしていた。

 だが、目の前に立つ家族は以前にもまして痩せてしまっている。

 その事実が、廻が懸念していた通りのことになっていたとロンドは反省していた。


「事情はカナタ君達から聞いたわ。ごめんね、ロンド」

「俺がしっかりしていなかったばかりに……すまん」

「そんな、母さんも父さんも謝らないでよ。俺もちゃんと確認をしてなかったんだ」


 涙を流す母親を抱きしめ、悔しがる父親に視線を向ける。そして、アルダの頭に手を乗せた。


「……兄、ちゃん」

「……これからは、お腹いっぱい食べさせてあげるからね」

「ありがとう、兄ちゃん!」


 アルダは声をあげて泣き出した。

 スプリングでの生活は相当に厳しいものだったはずだ。

 贔屓はできないが、少しでもヤニッシュ家が安心して暮らせる環境を作らなければならないと心に誓う。


「ロンド君のお父さん、お母さん、アルダ君」


 その想いを伝えるべく、廻は一歩踏み出して声を掛ける。

 いつものように経営者とは思われないのだろうと考えていたのだが、予想外にヤニッシュ家の三人は片膝を地面に付けて頭を下げてきた。


「ジーエフの経営者様でございますね」

「この度は、我ら三人を受け入れてくださり、誠にありがとうございました」

「で、できることを、全力で取り組みますので」

「「「どうかよろしくお願いいたします!」」」


 驚いた廻が顔を上げると、カナタ達が笑顔を浮かべている。

 ジーエフまでの道中で、廻という経営者の人となりや、その見た目について説明していたのだ。

 廻も笑みを返すと、改めてヤニッシュ家に声を掛けた。


「まだまだ未熟な経営者ではありますが、皆様が心安らかに暮らしていけるような都市にしていきたいと思います。こちらこそ、どうかよろしくお願いします」


 廻の言葉に顔を上げたヤニッシュ家の三人は、まるで聖女が微笑んでいるかのように思えただろう。それ程に苦しい生活を送ってきたのだ。

 母親やアルダはもちろん、ここまで涙をこらえていた父親の目にも光るものが見える。


「……メグル様。僕も全力でお手伝いさせていただきます。改めてになりますが、どうかよろしくお願いします!」

「こちらこそ。よろしくね、ロンド君!」


 こうして、ジーエフはさらに加速的にダンジョンランキングを駆け上がっていくのだった。


 終わり


※※※※

『異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!?』は、今回の更新をもって終了となります。

 個人的に楽しいと思いながら書いておりましたが、反応も芳しくなく、また、様々なコンテストに応募しておりましたが悉く落選となり、今回の決定となりました。

 まあ、第1章は結構前に執筆した部分なので、今読み返すと直したい部分も多々あり、そこを直せばもう少し変わるのかもしれませんが、時間が足りないのです。。

 読んでいてくれた読者の皆様、ここまで応援していただき、本当にありがとうございました。

 カクヨムでは、また新作を投稿するつもりでおりますので、その際はどうかよろしくお願いいたします。

 ではでは、本当に感謝申し上げます。


 渡琉兎

※※※※

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異世界ダンジョン経営 ノーマルガチャだけで人気ダンジョン作れるか!? 渡琉兎 @toguken

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