反異界主義者と異世界FTA(3)
面白い人間だと思う。いや、だったというべきだろう。
私は、手の甲の少し剥けた薄皮をぺりぺりと剥ぎつつ先ほど戦った相手を追憶する。
この異界とはまた異なる第三の星の力なのだろうか、突如何もない空間から一瞬にして男が湧き出たのだ。
この世界の、科学と呼ばれる技術は相当程度驚異だが、それを遥かに凌駕する。明らかな物理法則からの逸脱。まるで御伽話の魔女のような能力に驚きがなかったといったら嘘になる。
飄々とした線の細い男だった。他の能力者とは異なる凄みのない、どこか軽薄さすら感じる殺気。
「殺し合いを遊びと考えていた」
相棒が吐き捨てるように言った。
まったくだと思い、私は首肯した。
この世界は、他の世界との繋がりが強い。ハブ世界ともいわれるだけあって、多くの人間が他の世界を渡り歩く。その中で、数奇な運命に導かれる者もおり、力を得るものもいる。
強い者もいるだろう。おそらく私よりも。
自身が極限まで鍛え上げた力をもってしても、届かない境地があることは知っていた。
しかしながら、先ほどの男は何だったのだろうか。まったくもって厚みを感じない男だった。
ただ我々の前に突如出現し、「100ポイント」と言いナイフを投げつけて来た。
投げつけられたナイフをはじくことは、私にとっては容易い。しかし、相手にとってはそうではなかった。少し驚いたように目を開き。私の後ろを見て、消えた。
「ほら死ねよ、100ポ-」背後で男が言葉を言い切る前に、振り向き渾身の力を籠める。私の拳で、彼は爆散した。
能力は明らかに異常なまでに強いはずだ。その力に奢ったかのような攻め方。最初の出現を我々の背後にしただけで、まったく異なる結果になったことも考えられる。
「転生ボーナス組という奴ですかね」
相棒がまた吐き捨てるように言った。
私は間抜けな奴だと笑おうとして、うまく笑えずやめた。
相棒は、魔導書を開き、男の飛び散った死体の太宗と、周囲のエナを吸引した。
「んー。本当に便利ですね、これ。簡単に痕跡が消せる。どうします?もうちょっとキレイにしときますか?」
遠くでサイレンの音が鳴っているのが聞こえた。男を爆散するにあたり、窓を少し壊した。外の者が、この世界の警察と呼ばれる部隊を要請したのだろう。
時間がない。
私は相棒の手を取り、抱き寄せ、力の限り跳躍した。
異世界帰還者は奴隷探偵くん @Hajikas
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界帰還者は奴隷探偵くんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます