10
くっさい。すっごいくっさい。
もしかして紺野さんのオナラっていつもこんなに臭いのだろうか。なんというか、逆にすごい。
臭すぎて、目から涙を流している僕に、紺野さんが顔を真っ赤にしながら僕に言った。
「・・・どうかな?」
『どうかなって何が?』そんな風に僕は一瞬だけ思ったけれど、遅れて理解が追いつく。紺野さんは、僕が『オナラで好きになった』って言ったから、オナラをしてくれたのだろう。
ということは、これは、告白が成功したということなのか。いやでも、どうなんだろう?紺野さんはどうやら、恥ずかしさよりも気遣いを優先する思いやりの人のようだし、もしかしたら、僕が喜ぶと思ってオナラをしてくれた可能性もゼロじゃない。
「・・・・・・。」
僕が何も言わずにフリーズしていると。
紺野さんは、恥ずかしさが込み上げてきたのかプルプルと震えだした。
いやいや、そんなに恥ずかしいのなら、オナラをしなくても良かったのに。
「っぷ。」
僕はそんな紺野さんが面白くて、つい吹き出してしまう。
「えっ!・・・なんで笑うの?私、恥ずかしかったけど、がんばったのに。」
紺野さんが真っ赤になって僕に言う。紺野さんはがんばっている方向が、いつもなにかおかしい。
「あ、ごめん。紺野さんがオナラをしてるのが、なんか可愛いくて。」
「えっ!?・・・そうなの?」
可愛い、と言われたからだろうか、またもやもじもじとしだす紺野さん。
あ、可愛いなんて、また口を滑らせてしまった。
もう告白をしてしまったからだろうか、鼻先で嗅ぐ紺野さんのオナラがあまりにも臭かったからだろうか、あんなに言いたくても言えなかった言葉がスラスラと出てくる自分に少し驚く。
「オナラって、なんかおかしいよね。」
僕は紺野さんにそう言って、笑いかける。そういえばオナラって、男同士だと笑いのネタになるだけだし。
「それって同性限定だと思うけど・・・。」
そんな僕に、紺野さんは何か納得の言ってない顔で、答える。
なるほど。だとすると、紺野さんと僕の関係は『お友達』ってことになってしまうのかもしれない。
・・・結局のところ、紺野さんは僕のことをどう思っているんだろう?
一刻も早く聞きたいところだけれど、またも放たれた紺野さんのオナラによって、なんとなくそんな雰囲気じゃなくなってしまった。
まあでも、もともと告白なんてするつもりはなかったんだし、うやむやに出来るなら、それでもいいのかもしれない。
「あ、そういえば、僕、紺野さんにずっと言いたかったことがあって。」
「え?な、なにかな?」
僕がそう言うと、もじもじと赤くなりながらも、僕の目の前にポスリと座る紺野さん。
告白が成功したのか、失敗したのかはわからないし、二度目の告白に挑む勇気なんてとてもないけれど。
でも。
今ならこれくらいは簡単に話すことができる。
「紺野さん、実は英語だとさ。オナラを表現するスラングは少なくとも261通りあるらしいよ?」
「え!?・・・なんで今、そんな話を今するの?」
僕の言葉に紺野さんは、心底納得の言ってない様子でそう言った。
僕はただ、おならを表現する261通りの表現について君に話したい。 ふつう人 @Helium256
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