第6話 決戦! 本能寺ドラゴン!
本能寺ドラゴンの底面にある機関砲の銃身が、超高速で回転しながら火を吹いた。
同時に二十ミリをゆうに超える大口径の弾が豪雨のように大統領へと降り注ぐ、もし事前に明智軍が撤退してなければ、全員蜂の巣となって三日天下どころか三時間天下となっていたことだろう。
そして大統領でなければその嵐のような弾を防ぐことなどできはしない。
「ふはははは、このような鉄の塊で私の体を貫けると思ったか!」
大統領は降り注ぐ砲弾に対し、自分に命中する砲弾全てを殴ったり蹴ったりして叩き落としていく。何百発も放たれた機関砲弾は一発として大統領の拳と足以外には命中しなかった。
だがそれはDr.タイムマンからすると百も承知のようで、動きが止まった瞬間を狙って八本の光の鞭を大統領に向けて伸ばす。
大統領はまず一番近くの鞭を掴むのだが、掴んだ瞬間皮膚が焼けるように熱くなって離してしまう。
「これは、その鞭は光学兵器か」
「ご明察、流石はMITを首席で卒業しただけの事はある」
「あまり褒めるなよ、照れるじゃないか」
大統領は迫りくる光の鞭を紙一重で躱し、避けられないものを素手で掴む、鉄をも一瞬で溶かす熱量を掌に感じながら、大統領は思いっ切り鞭を引き寄せて本能寺ドラゴンを地に落とそうと目論んだ。
本能寺ドラゴンは空中でガクッと傾いた後、大統領が掴んでいる光の鞭を切り離して再び空中でバランスをとった。
大統領の掴んだ光の鞭はエネルギーの供給を絶たれたために消失する。本能寺ドラゴンの光の鞭は七本になっているが、すぐにまた生えてきて八本になった。
「機関砲、光の鞭、さあ次は何でくるんだ?」
「とっておきがある!」
Dr.タイムマンが叫ぶと光の鞭が消え、代わりに本能寺の本堂が変形を始めた。それは奇怪な動きを繰り返し、ついに砲身へと姿を変えた。
砲身の周りに光が集まってくる。
「チャージしてるのか」
「まずは二十パーセント程の威力を楽しみたまえ」
チャージを完了した砲身から光の帯が放たれる。実に六メートルの太さはあるその光の帯はまっすぐ京の北端へと向い、そこの山を二つ程消し去ってようやく収まった。
「見たか! これが本能寺ビームの威力だ! 次は貴様だ!」
再び砲身に光が集まってチャージが始まる。今度はさっきよりも長い、跳び上がって砲身を破壊するべきだがおそらく発射までに間に合わない。そして一度発射されたのならそれを避ける事はできない。
「くらえ! 本能寺ビィィィム!!」
真昼の太陽よりも尚明るい光の帯が放たれて大統領へと迫る。
本能寺ビームは大統領を包み込んで、背後の民草がいる都へと命中する……筈だった。
「なにっ」
本能寺ビームは大統領の突き出した拳に防がれてそれ以上進むことができていなかったのだ。
「馬鹿な! 先程よりも威力を上げたのだぞ! 星一つ貫通する程の熱量を拳で防ぐことなどありえない! 」
「ありえるっ!! 何故ならっ! 私がっ! 大統領だからだっ!! 」
尚も衰えぬビームを受け止めながら大統領は叫ぶ、彼の背後には守るべき人々がいるのだ。
「何が大統領だっ! アメリカ国民ですらなければ、時代も違う人間を守ってなんになる!?」
「たとえ国と時代が違えども、
「綺麗事を抜かすな為政者が!」
「綺麗事一つ語れない為政者などこの世に存在する価値はない!!」
本能寺ビームの出力が更に上がり、大統領も片手では抑えきれなくなってきた。両手を突き出して何とか抑える。
「ど、どこにこのような力が!」
「私の後ろには守るべきものがあるっ! そしてそれが私の背中を強く前へ押し出すのだぁっ!!」
一歩、前へ踏み出した。また一歩、それに合わせて本能寺ビームは徐々に拡散していく。押し戻される本能寺ビーム、次第に威力は衰え、ついに本能寺ドラゴン全てのエネルギーを使い切ってしまう。
「まさか、これほどの熱量をもってしても大統領は倒せないのか」
本能寺ビームが止まった隙をついて大統領は跳び上がり、本能寺ドラゴンへと着地する。目の前には憔悴したDr.タイムマンがいた。
化け物めいた力を有する大統領を目前にしたDr.タイムマンの目には、彼が悪魔のようにみえた。
最早抵抗する気もない。
「本能寺ビーム、中々の威力だったが。父の拳骨の方がよほど痛かったぞ」
エネルギーを使い果たした本能寺ドラゴンがゆっくり降下していく、元あったところに落ちるよう微調整しながら粉々に砕いた後、大統領はDr.タイムマンを抱えて空中を殴る。
ホワイトハウスの時と同様に、時空が割れてそこへ飛び込んだ。
「やれやれ、このタイムトラベルは筋力の消費が激しくてな、流石に二回も行えば全身筋肉痛は免れない」
そして、大統領は未来へと帰っていった。
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