大学の新入生勧誘PRイベントで軽音学部の演奏を目の当たりにした白井健は、美しい鍵盤奏者に憧れてサークルへの入部を決心する。
部室に足を運んで早々、鍵盤奏者・月無めぐると対面する幸運に恵まれた白井であったが、何となしに発した「FFのサントラ持ってます」の一言が月無先輩のスイッチを入れた。
何を隠そう(いや隠してるのだが)、月無先輩は重度の「ゲーム音楽」マニアだったのだ……。
――という筋立ての、大学を舞台とした青春ストーリーです。
読んでいてまず目を引くのは作者様の音楽に関する造詣。
メインテーマであるゲーム音楽はもちろん、そのバックボーンとなる音楽自体やバンドについての知識がさらりと作中に盛り込まれており、これは経験者であろうなあと察せられます。
また、ゲームマニアである月無先輩や白井君の語り口は、ゲーム音楽とは切っても切り離せないゲームそのものへの愛情を感じさせてくれます。
SFCからPSやGC、GBやDSといった携帯機に至るまで、およそゲームに触れたことがある人であれば「わかるわかる」と膝を打つシーンが盛りだくさん。思い出に浸りながら読み進めることができます。
登場人物たちの人間模様も目を惹きます。
主人公である白井君の誠実さや月無先輩の無邪気さ、男性陣のアホなノリ、女性陣の魅力と、大学生らしい若々しさが詰め込まれた一作です。
個人的には八代先輩がお気に入り。褐色スポーティ女子いいよね……。
※本レビューは「小説家になろう」「ノベルアップ+」にも掲載されています。
大学に入学した白井健が軽音楽サークルで出会った月無めぐる先輩は、筋金入りのゲーム音楽マニアだった。そして彼と美人先輩とのゲーム音楽を巡る大学生活が始まる。
ゲームにおいてBGMは主役ではない。けれども欠かすことの出来ない名脇役だ。
ゲームの中に広がる壮大な世界を旅するときも、大好きなキャラクターの出会いと別れのときも、強敵との決戦に向かうときも、いつもゲーム音楽はプレイヤーとともにある。
ヒロインの月無先輩は、そんなゲーム音楽に魅せられた一人だ。ゲーム音楽を聞くのも自分で弾くのも好き。ゲーム音楽の話題を振れば、嬉々として語り続ける。自分の大好きなものに一途な彼女のそんなところが素敵なのだ。
作中に登場する曲はすべて実在するゲームの名曲だ。プレイ経験のある人ならタイトルは知らずとも「ああ、あの場面の曲ね」と耳が覚えているだろう。
二人の会話はゲーム音楽のことばかり。J-POPやクラシックなどのメジャー音楽にはない、ゲーム音楽だけの魅力にあらためて気づかされる。
皆さんも二人と一緒にゲーム音楽に想いを巡らせてみてはいかがだろうか。
(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=愛咲優詩)
ありそうでなかった、ゲーム音楽を題材とした物語。大学の軽音楽部を中心に、個性豊かな面々が織りなす青春ストーリーです。
音楽の良さを文字で表現できるのか? 本作品には、その模範解答が記されています。
たしかな音楽的知識による解説と、溢れんばかりのゲーム愛。理論と感情の両面でつづられる歴代の名曲に、心が弾まないプレイヤーはいません。
楽器に関しても造詣が深く、また青春ドラマとしても読みごたえがあるので、テレビゲームで遊ばない人でも十分に楽しめます。
登場タイトルを知っている人なら思わずニヤリとする小ネタもあり、読み込み要素満載の作品です。ぜひご覧ください。