6. 入間河原にて
最初に、
こうして彼は、これ以上の立ち聞きをするまでもなく、村長に報告するために夜の中を走り去っていきました。
さて、
唐糸「飲むのもいいけど、足の疲れは、酒を吹きかけると効くのよ。少し待っててね。
大太郎「アーイ(ポロンポローン)」
そうして唐糸は町に出て、持参したヒョウタンに酒を満たして戻ってくることができたのですが… 家に近づいてきたというところで、両側から腕をむんずと捕まれました。
唐糸は「何をする」と一声叫んで、両側の二人を逆にねじって投げました。目の前にもう一人が立ちはだかりましたが、これも胸のあたりをバンと叩いてひっくり返します。いつしか、周りには十人ほどの雑兵が囲んでいました。
男「抵抗は無駄だ。我こそは、
唐糸「…!」
唐糸「な、何を…」
大太郎の名まで出されて、
唐糸「…本当に私たち二人は助けてくれるのね」
唐糸「条件があるわ。これがうまくいったら、私を
唐糸「約束よ。…まずは、あの
唐糸「彼をこうこう、こうして、仕事をやりやすくするわ。そうしたらあんた達に合図をするから、そこで家に突入しなさい。これで万全よ」
唐糸「フン、私は言ったとおりにやるわよ。好きなだけ見張っておいで」
唐糸はこう約束したあと、何食わぬ顔で、酒の入ったヒョウタンを抱えなおすと家の入り口に近づき、中の様子をうかがいました。
小太郎「…だから、
小太郎「主君の危機だ。俺は
唐糸もあわててこの場をおさめにかかりました。「何をしているの、およしなさい!」
二人はサッと唐糸の命令に従い、正座をして決まりの悪そうな顔をしました。
唐糸「あなた達には感心するわ。小太郎の忠節、そして
小太郎・桟橋「えっ!」
唐糸「あなたたちは夫婦となって義高さまのために仕えるの。いいわね
小太郎「わかりました、
唐糸「さいわい、酒があるわ。すぐに盃を準備しますからね。私が
こうして、唐糸は大急ぎでお膳立てを整え、ささやかながら婚姻の儀の体裁ができあがりました。唐糸は盃に酒をなみなみと満たし、順序にしたがって二人にすすめました。二人はこれを残らず飲み干します。
唐糸はこれを見届けると、やおら立ち上がり… そして、意味の分からない笑い声をたてました。「ふ… ふ… あはは、あははは!」
まるで狂人のようです。小太郎も
二人の苦悶をよそに、大太郎のヘタな琴の音が部屋中に響きます。
小太郎「我らを… 売ったのか! 欲に、惑うて…」
小太郎は、必死に、毒で動かない体を、刀を杖にして持ち上げようとしています。
小太郎は、残った力をすべて振り絞って、一撃だけ刀を振り下ろすことができました。それを唐糸はなんなく避けましたので、彼はよろめいて、奥の部屋に通じるフスマを壊してしまいました。そこから、今までのいきさつをすべて聞いていた
義高「許せん、許せん、
勢いよく刀をふりかぶった
入り口からノシノシと歩いて入ってきたのは、
もはや意識ももうろうとしていますが、小太郎は、この光景を、煮えるような涙を流して見守っていました。そして、何もかも終わってしまったことを知ると、いよいよ最後の力を振り絞って、刀を自分の腹に突き刺しました。「
唐糸は、突然ひざまずきました。
唐糸「ああ、二人とも、許してちょうだい… 今こそ言うわ、死ぬ前にこれだけを聞いて!
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