剣を鋤に、槍を鎌に
皇紀2680年3月30日―安興3年3月30日
本日を持って、私がこの日誌を記載するのは最後になる。
明日、3月31日をもって除隊をするからだ。
年が明けるまでの間、年甲斐もなく悩んだりしたものであるが決心はついた。
親の地盤を引き継いで政治家になる。
きっと、多くの者から二世議員だ何だと馬鹿にされ、疎まれ、蔑まれるのであろう。あるいは阿り、媚び諂い、すり寄ってくるのかもしれない。
今までとは別種の苦労と苦難と困難が待ち受けているのだろうが構うものか。
この国が今後、再び戦火に飛び込むのか、それとも平穏なままで歩むのかについて自らが決めるだなんて傲慢な気分でこの世界に飛び込むつもりはない。
私はただ、国民の多くがこの国の行く末を決めようとしているときにただそばにいたいだけなのだ。
いや、こんなことを言っていたら何の為に政治家になるのだとドヤされてしまうな。どういえばいいのだろうか。
そうだな、私はこの国が何か大きな決断を迫られているときに真っ先に声を挙げていきたいのだろう。
誰もが悩み、苦心するときに、誰よりも早く大きな声を挙げて私自身が急先鋒に立ち、そしてすべての批判の矢面に立ちたい。
誰もついてきてくれなくてもいいし、国民全体から批難の声を浴びて辞職する羽目になっても構わない。
それでも、議論や論争の一石になれればいい。賛成にしろ、反対にしろ、この国に住まう国民の叩き台になっていけたらそれでいい。
後世の人間にはきっと馬鹿なオッサンだといわれるのだろう、稀代の悪政家として教科書に載るかもしれない。それもいいだろう。覚悟は出来た。
おそらくは、これは私の勝手な考えだが、この緩やかな戦間期―平和というにはいささか物騒だ―は、しばらくの間続くだろう。
災害から始まり文化委託政策に端を発した世界を巻き込んだバカ騒ぎはセカンドステージに突入した。
これが、ファーストステージと同じような鉄火雷風が吹きすさび弾雨が降り注ぐ嵐になるのか、はたまた権謀術数が渦巻き、悪鬼魍魎の蠢く暗夜と化すか、はたまた凪いだ水平線のように穏やかであるかは分からない。
一つわかることは、この言葉を使うの非常に癪に障るのだが、我が国では、剣を鋤に槍を鎌に変えて、内政に取り組まなければならないということだ。
誰もが決断を迫られる時は必ずやってくる。
それまでの間、私はこの国がどんな決断でも下せるようにバランスを取ったかじ取りを担えるように努力をしていくつもりだ。
それがどんな結果をもたらしても私は笑って死んでいこう。
この日誌の続きは私なり、それとも私の子孫か誰かこの日誌を託したものが将来、失ったものを取り返せた日に続きを書くこととしたい。
最後に。
パリよ死ね!パリよ滅びろ!
とある皇国軍士官の日誌 不破 雷堂 @fuwafuwaraidou
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