リベリオン・オリジン(反逆の原点)

第1話

 この話は私、世界管理システムのウーマスが生まれる前の話でこの世界、リベリオンの最初の反逆の物語。そして私を生み出した神から教えてもらった彼女の昔話。



 この物語は東北のとある山中の道路から始まる。

 夏の連休初日、雨の日の夜に過積載と言えるほどの荷物を積んで北海道へ向かうため駆け続けているバイクがあった。

 油冷エンジンのレーサーレプリカで色は黒。ライダーのヘルメットも黒でレインジャケットも黒。更に荷物のほとんどが黒で統一されたバイクだった。

 そのライダーは雨で体が冷えているのかあまり体を動かさない。

 もし並走が可能ならばジャケットを内側から圧迫する胸により女性のライダーだとわかるかもしれない。

 彼女はハンドル付近に取り付けているスマホナビに従いしばらく平均40~50キロの速度で北へ走っているとコンビニが見えてきたので一度休憩をすることにした。

 駐車場にバイクを止め、サイドスタンドを出してバイクが倒れないことを確認すると荷物を背もたれに少し休む。

 少し休んだらエンジンを止めコンビニで微糖の温かいコーヒーを買って店内のテーブルで休憩をする。

(就職浪人しなかったのは良かったけど今の職場は変態しかいなくて終わってるな。男性社員はセクハラ野郎ばっかしだし、女性社員は肉奴隷ばっかしとか本当に終わってる。あぁ就職失敗した。本当なら訴えたいけど会社がなくなるかもしれないし、その場合他人の人生に対する責任感か何かで苦しみそうだから辞表出してさっさと辞めよう。幸いこの連休は仕事無いから今年も下道で北海道ツーリングに行ってリフレッシュしますか。)

 会社に関しての考え事をしつつコーヒーを飲んでゆき、空になると彼女は体を反るようにして伸びをした。

 そして休憩前と変わらず雨が降る中ライダーは再びバイクにまたがり走り出す。

ここまでは問題なかった。

 事件が発生するのはこの後少し時間が過ぎてからで、事件について簡潔に説明するのならば対向車がバイクに突っ込みライダーの女性が死んだ。

 詳しく説明するのならばバイクからしたら登りの右コーナーで、対向車からしたら下りの左コーナーで対向車は減速できずにバイクに突っ込みライダーの女性は車両と壁で圧迫され死んだ。

 もし壁でなかったとしてもここは山の中。ライダーの女性は崖下に投げ出され死んでいたことだろう。

 対向車のドライバーはあまり速度が出てない状態で事故になったため大きい怪我は無い様だった。しかし人を殺してしまったことによる精神的なダメージは大きいだろう。

 そしてこの女性ライダーの魂がこの世界ではなく別の世界に行き生まれ変わることで物語は動き出す。


 

多神歴(通称教国歴)24239180年

 この年に将来<女神ミリア>と崇められることになる女性が生まれる。

彼女は商業都市で宿屋の娘として生まれるが人には言えないような秘密を持っていた。

 彼女は生まれてちょうど15年経った時に前世で北海道に向かう最中事故で死んだことを思い出し、更に強い思いがこの世界に影響を与えることを何故か知っていたのだ。

 この世界観についてだが、ぱっと見は中世ヨーロッパのような世界だ。魔法という特殊技術がある世界のため科学技術の成長が遅い。神を疑うことが少なく科学の代わりに魔法があるのならば成長が緩やかになることは仕方がないことなのかもしれない。例としてコンクリートは技術が発展していた古代ローマ時代は墓などに利用されていたがローマ帝国が滅んでからはその技術は退化し産業革命後になるまで使用されることはなかった。

 話を戻してそんな秘密を持った彼女なのだが、しかし彼女は特別を望まないただ平穏な日常を望むだけ。

 そのため彼女はこの都市としての普通な生活をした。

具体的には宿に泊まることが目的だったり食事が目的だったりする様々な冒険者や商人、旅人から多数の国や都市の話を聞いたり計算や武術といった技術を学んだりと多種多様な知識、技術を得ていた。これは宿屋の娘の生を受けて、物心ついた時からずっと繰り返し続けていたことだ。

 そんな宿屋の娘としての平穏な生活は突然終わりを迎える。

 彼女がこの世界に生まれてから十数年もしくは二十数年過ぎたある日。

 その日はこの都市に他の都市を管理する貴族が複数来ていた。

 理由は簡単でこの商業都市は年に一度、大金が動くほどのオークションがあるのだ。

 オークション自体は毎月一回行っている。そこで出品されるのはある程度の商品で冒険者や旅人をメインとして行われているが、年に一度行われるこのオークションはすべての人に向けたもので3日にかけて行われ、メイン会場では素晴らしい商品や珍しい商品を取り扱っている。サブ会場はフリーマーケットのようになっており日常品などの品を買うことができる。

 これがあるため貴族が複数来ていたのだ。風の噂だが王族がお忍びで来ていたという噂もある。

 とてもにぎわう行事のため当然、貴族用のスイートルームしかない宿は先に来る貴族によって即座に埋まってしまう。

 そのため遅く来た貴族は普通の宿に泊まるしかないのだ。

 不幸なことに普段スイートルームに泊まっている貴族が出遅れ宿をとり逃してしまう。

 結果彼女の宿はその貴族が泊まり終焉を迎える。



宿屋の娘視点

 突然だが困ったことになってしまった。

 今まで何度か貴族が泊まりに来たことはあるがここまで横暴な貴族はいなかったのだ。

 これまであったことを振り返ると、

 まず貴族が入ってきた。

 続いて執事であろう人が受付でチェックインを済ませる。宿泊は三泊四日だ。

 私が部屋の案内をするが貴族は文句しか言わない。正直うざい。

 案内が終わると日本でいうセクハラを受けた。とっさに攻撃しそうになったがさすがにそれはまずいので即座に逃げる。

 食事の時や店への入外出の時貴族は文句やセクハラしかしない。本当に死ねばいいのに。

 そして私が三日耐えた今、例の貴族は宿泊を1泊延長し私を買うとか言ってきた。そして執事の人に連れられ強制的に貴族の部屋へ連れて来られてしまった。

 他のお客さんにも迷惑が掛かっているので早く帰ってほしいものだがどのように対応すればよいだろうか。

 悩んでいると何も言わなかったことから問題ないととらえたのか私に手を出してきた。

 流石に売春はしてないので手を払いのける。

 すると私の行動に対し貴族と執事は文句を言ってきた。

「何も言わなかったのだから了承ではないのか」だの「このお方を断るとはどういうことだ」だの訳の分からないことをほざいている。きっとこの貴族にとって平民は便利な道具なのだろう。

 私は犯されないために必ず人がいる入口(普段はホール、食事処と呼んでいる)に逃げて両親や常連のお客さんを集め事情を説明した。

 しばらくすると貴族と執事が来るが、この場の人に私が貴族に犯されそうになったのは伝えてあるからきっと味方になってくれると思う。

 結果は簡単な戦闘にはなったものの貴族はこの宿からでていった。

ちなみにこの都市では合意の上で無ければ性行為は強姦とされ貴族だろうが関係なしに犯罪になる。この貴族は自分の都市と勘違いしているのではないだろうか。

オークションが終わって貴族が居なくなった2日後。

 親に数日ほど外出すると伝えて私はストレス発散を兼ねて冒険者として近場のダンジョンに潜って戦闘をしていた。

 問題が発生したのはこの数日後で、私が久しぶりに家に帰るとそこには焼けて廃墟になった宿にさらすように壁に磔にされている焼死体があった。

 私は焼死体に見覚えしかない。

 なぜならそれは私の両親だったからだ。

 絶望している私を見かねた近所の商人はしばらくの間家に泊めてくれた。

 絶望から復帰した私は即座に宿時代のコネや情報屋などで宿と両親を焼いた相手、その元を探した結果予想通りこの間の貴族とそれに雇われた闇組織だった。

 私は両親を殺し、宿を燃やした貴族を殺すため旅人となり各地を転々とした。関連組織をすべて潰すのだ。

 その過程で火、地、風、水いったすべての属性の魔法を覚えた。そして日本人としての知識を利用し魔方式を組み替え復讐用の相手に酸欠を起こさせずに焼き殺す魔法と戦闘用魔法で圧縮して金属のように固くした土を銃弾のように打ち出す魔法を作った。しかし土の魔法はコストパフォーマンスが悪く、最初から金属のかけらを持って風の魔法で音速以上の速度で打ち出してやるほうが効率良かったためそちらの魔法をメインで使っていた。水の魔法?拷問用といえば理解してもらえるかな。

 旅をしてみて改めて分かったことができた。

 それは仲間の大切さと人の善性、悪性についてだ。

 私は旅をする中で様々な考えを持つ敵や仲間、似たような境遇がある同志がいた。

 その中には純粋に助けてくれる人や見返りを求める人、どこで裏切ろうか悩んだ人やチャンスがあればすぐに裏切った人など本当に様々な人に出会えたと思う。

 私を裏切った人、裏切ろうとした人は拷問にかけてその人の誠意、吐いた情報に応じて苦しめたり苦しまずに殺したりした。

 目的の地へ向かうにつれて治安が悪化している町が多く仲間や知り合いが殺されたり犯されたりしていたが治安が悪く理不尽、不条理にまみれているのなら仕方がないだろう。運がいいことに私の生まれた都市は治安が良く平和だっただけなのだ。

 私はそんな復讐心にまみれた旅をしてついに私を犯そうとした貴族を殺した。

 え?話が進むのが早いって?仕方ないじゃないか特に面白い出来事なんてなかったのだから。

 とにかく復讐を終えた私は最初に暮らしていた都市へ数年ぶりに帰ったのだがそこにあったのは衰退した町のみでオークションで活発だった都市は見る影もなくなっていた。

 更に私がいない間に様々なところから貴族などの立場が高い人が宣戦布告をしてきてもうじきこの都市だった町は滅びるらしい。

 私を助けてくれた人々は戦争で亡くなり、知り合いで他に逃げた商人は死んだらすべてが終わるからと町に残る人に移転先を伝えたようだ。死にたくないから逃げたようだがこの都市と住まう人のことは好きだったのだろう。

 私は親と同じ墓に入れたらいいなとこの町に残ることにした。

 数か月後戦争が始まる。

 私は即座に前線に向かい魔法と剣を併用して殺しまくった。

 とにかく効率を優先してひたすら剣で人をたたき切り広範囲に魔法を飛ばして相手に被害を与えた。

 しかし質が高い冒険者や兵士がいても数の暴力に負けてしまいこの戦争は敗退、町も蹂躙されてしまう。

 戦争に負け、捕虜として捕まった私に待っていたことは兵が性処理を行うための奴隷であり、強い人間を産むための孕み袋としての役割だった。

(弱くても苦しみ強くても苦しむ。私も復讐のために人を殺しまくったから相手からしたら理不尽を振りまく側だったかもしれないがこの理不尽、不条理の多さは何なんだろうね。神が手出しできるくせして何もしない無能だからこんな世の中になるのさ。神の名のもとに自分の悪性を善性と思い込み神はその思想を正そうとしない。自分が神だったら理不尽と不条理を減らしより良い世界にするのに。少なくともこんな荒廃した終わっている世界なんて糞くらえだ)

 そんなことを日々思いながら死ぬまで私は犯され、孕み、産み続ける。強い人を作るために。

 長い間苦しみ、世界を思い、世界を恨み、こんな人生しか生きられなかった自分を呪い最終的に私は死んだ。

 気が付くとそこには様々な強い感情、想いで神になったと自称する馬鹿どもがいた。

 私はこの無能なくせして無駄に上から目線の神どもが嫌いでしばらくしないうちに皆殺しにし、私が唯一神になっていた。

 その後私は、人による理不尽と不条理を無くすために世界を監視し、管理しやすくするためのシステムをこの神の世界に生み出し私の独断と偏見で悪性が強い人、理不尽と不条理をばらまく人に死を届けてあげた。

 私が唯一神となってこの世界に干渉し、女神ミリアを名乗った日からこの世界は女神歴としての歴史が始まった。



女神歴48428年

「ミリア様。宿屋の娘視点から最終的に自分語りになったこの物語の主人公は貴女ですよね?」

「それがどうした?ウーマス」

「宿屋の娘の名前はミリアでいいんですよね?」

「私は今ミリアと名乗っているがその時は違うぞ?もう捨てた名だしそこまで気に入っていた名ではないからな。覚えていない」

「両親を尊敬していそうですがなぜ名を捨てたので?」

「復讐の時はほとんど日本人のような思考をしていたからな。両親は好きだったが神になるのにそのことを引きずりたくなかったから名を捨て、とあるゲームに出てきた滅びの女神の名を使わせてもらったのさ」

「なぜ今になってこの話を?」

「なんとなくだ。自分のことを誰かに覚えていてほしかったのだろうな」

「よくわかりました。話は変わるのですが貴方は最近娯楽で人殺しなどをすることが増えていますね。知っていると思いますが各地で復讐心や反逆心が多く芽生えています。貴方がした神殺しをされないようにご注意ください。もし死んだら次はミリアとして転生させますね」

「わかったよ。元神だからといって記憶を残すのはやめてくれよ。人として生きれなくなっちまう」

「無問題です。こんな楽しい会話ができる日々が続けばいいですね」

「そうだな。娯楽のために馬鹿やってるのは知っているがなるべく長く続けばいいな」



 これが私と彼女との最後の会話。

 当時の私はこの関係が終わることに少し寂しさがあったが今はそうではない。

 何故なら結局彼女は何度も転生し神になり私の元に帰ってきてくれるのだから。

 最初の転生者の記憶、最初のミリアの記憶が彼女になくとも私だけは覚えている最初の神への反逆で始まりの女性の物語。

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