第7話

第7話

誰かと一緒に帰る気分じゃなく今日は1人で下校した。僕の親友が君を好きだったなんて考えもしなかった。そんなの聞いたことなかった。いや、考えたくなかったのかも知れない。家に着く直前に見たくない光景が僕の目に飛び込んできて、慌てて隠れてしまった。君と僕の親友。君の家の前で何か話しているようだった。何を話しているのだろうか。2人は真剣な面持ちで向かい合っていた。じっと見ていると何処からか聞いたことのある声が足元から聞こえてきた。

「ふーん。あの男の子なかなかやるね。」

下を見ると今まで姿を見せなかったルアが2人を見ながら僕に言った。僕はここに戻って来れるように繋げてくれたこの猫を少し忘れかけていた。今まで僕が忘れそうになるほど姿を見せずいたルアにどこにいたのか聞こうとしたが、聞いてはいけない気がした。聞いても多分本当のことを言ってはくれないだろう。僕はそんな思いを胸にルアの言葉に返事をする。

「何が?」

「伊吹は本当に鈍いね。あの女の子にも言われたじゃないか。あれはどう見ても告白だろう。」

「告白!?!」

あまりのことに大声を出してしまったが、声を小さく戻し、落ち着いてルアに聞く。

「なんで告白ってわかるんだよ。」

「ふたりとも真剣な顔をしているだろう。そして、男の子の顔が少し赤い。」

「あいつ、そんなに顔が赤いか?」

「伊吹って意外と面倒臭いよね。」

ルアの発言に文句を言おうとしたが、次に発せられたルアの一言で、一気にその場の空気が張り詰めた。

「伊吹は告白しないのかい?」

ルアの質問に答えようにも答えられなかった。好きだった。確かに君が好きだった。間違いはない。それと同時に僕の親友も好きだった。後悔はしたくなくて、過去に戻れたら、君を救えたら告白しようと決めていた。けれど、僕の親友が君を好きなら話は別だ。

「諦めるの?」

「諦めるも何も無いだろ。僕の好きは恋愛感情の好きじゃないよ。だから告白はしない。」

僕は自分の心に嘘をついた。ルアにも嘘をついた。きっと僕の嘘に憎たらしいほど簡単に気づいているんだろうけど。

「ふーん。意外と弱虫なんだね。」

「そうかもな。」

「言い返して来ないんだ。」

「その通りだから。」

「あ、そっ。」

ルアはつまらなそうに僕に返す。僕のこの君を救うという難しい計画はルアにとっては遊びみたいなもので、全ての言動に深い意味はないのはわかっている。

僕達が話している間に君と僕の親友の話は終わったみたいで、君は家の中に入っていった。

足元で鈴がなった。

下を見ると隣にいたはずのルアが姿を消しいた。後ろからミャーと猫の声がした。振り返るとルアによく似た黒い野良猫が僕を見ていた。

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僕の命をあげる 小端咲葉 @uni_

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