5 / 了. Wǔ / liǎo

 全て走馬灯だった。

 私の命は尽きようとしている。

 今や同胞も誰もいなくなってしまった――皆最後まで生き残ろうとして、結局死んだ。こんな異国の地で。私が死地に連れ込んだ。

 彼らは、自らがしたかったことを、し尽くせただろうか?

 きっとそんなはずはない/私だってできなかったことが山のように残っている。

 青、黒、紫……どの特甲児童にも、もう一度挑みたかった。

 今ものうのうと暮らしているだろう王や泡泡や大夫を、この手で引き裂いてやりたかった。

 そして何より、そういう血なまぐさい全てをすっかり済ませて、穏やかに暮らしたかった。同胞と――愛した男と。

 私はもはや、この地で死んだ全ての同胞が、そういう心残りを一つでも少なくできたことを願うばかりだ。

 「こらァ息せんかいやァ、蛭雪ェ~!」

 陸王の腕の温かさを感じる/私を呼んでいる/ぐらぐら揺さぶられる――とても答えてやることができない。

脳みそ抜き取られてまうど~!」

 なんだ/薄れゆく意識の中、小さな驚き=陸王は死んだら脳を抜かれてユニットにされると分かっていた。

 それならば弟たちが死んだことも、分かっていたのだろうか/あるいは思い出したのだろうか。気になった――もう確かめることはできないけれど。

 ああ――心残りがまたひとつ。

 思い出してくれていると良い、と願った。

 九番/依依/濤/大維/蚕影――死んでいった人々はいつも、私に生きる道を教えてくれた。

 自らが終わる時は、彼らとの記憶をしっかり確かめたいと思ったから。

 私のことも、覚えていて――

 陸王。





  了

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ブルーテガルシュピーゲル BlutegelSpiegel 川口けいた @keita_shu_

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