第19話 暗闇の先にいた者

 真っ黒な門をくぐった先は予想通り真っ黒であった。

 自分の姿は鮮明に見えているのだから暗い訳ではない。

 地面を数度踏みつけてみるとカツカツと音がする。地面はガラスのような素材でできているのだろう。

 しっかりと確認しながら進めば例え穴があっても落ちる事はない筈だ。

 どうせこのままこの場所に留まっていても何も解決しないのだからゆっくりでも前に進まなければならない。

しかし、その前に


「クロ、何処!?クロ!」


 思い切り叫んでみたがクロの鳴き声は全く聞こえて来ない。

 もしかしたらあの灰色の世界に置き去りにしてしまったのではないか?しかしそう思ってももう遅い。

 既に真っ黒な門が何処にあるのかさっぱりわからなくなってしまったのだ。

 もしかしたらこの世界の別の場所にいるかもしれないという希望的観測を持ち出して自分自身を落ち着かせる。

 懐中電灯が電池切れしていなければまだ地面がわかりやすいのだろうか、杖のようなものを拾っておけばよかったのではないかと少々後悔した。

 私はただただ孤独に進むしかなかった。


 1人無音の世界で歩き続けていると引きこもっている部屋の中で座っているのを思い出す。

 この黒さが思い出させるのだろう。全く不愉快極まりない。

 早くクロを見つけ出してこの世界から出たい。

 

「クロー!クロ!……えっ?」


 クロを探して辺りを見渡していなければ間違いなく見つけることはなかっただろう。何故ならそれ程大きいものではなかったのだ。

 慎重に近づいてみるとそこにいたのは……


「えっ?私……」


 その時だ。突然激しい頭痛が襲ってきた。

 何がなんだかわからない私に様々なイメージが走馬灯のように目の前を横切っていく。

 

「……少しは思い出した?」


 目の前の小さな私が見上げるように私にそう言った。その顔は目元が真っ黒で大きく裂けた口を開いて不気味に笑っていた。

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