第18話 割れ目の先
なんとか対岸に渡ると目の前には大きな岸壁が現れた。
岸壁には大きな割れ目があり通れそうだ。
暗くて先が見えにくいため私は懐中電灯を取り出して明かりを点灯した。
オレンジ色の明かりは弱々しく、少し点滅するようになってきていた。どうやら電池が残り少ないらしい。
先導しようとするクロを自分の横に来るよう言いつけて、私はゆっくりと進んでいった。
割れ目から上を見上げても見えるのは灰色の天井だけでそれ以外に何もない。
割れ目の中は暗いことは暗いがこの弱々しい明かりでも問題なく歩ける。
最早なくても良いのではないかと思えてくる。
そんなことを思った瞬間、懐中電灯がチカチカと点滅して遂に切れてしまった。
何度かオンオフを繰り返したのだが全くつかない。
私は懐中電灯をしまうと壁に手をついて歩く事にした。
こうすれば少しは安全に進めるだろうという考えである。
目の前には暗闇が続いている。
まだ先は長そうだ。
かれこれ2時間程歩いただろうか?
ようやく目の前が明るくなった。
まるで闘技場のような空間であった。
よく見ると壁がとても高い。割れ目に入る前に見た岸壁より明らかに高いのだ。
知らず知らずのうちに下へと下っていたようだ。
そんな中にあったのは真っ黒な門だった。
吸い込まれそうなほど真っ黒な門。私は門へ入りたい気持ちなのだが、心の底では今すぐ引き返したいと思っていた。
この門をくぐったらいけないと自分自身が警告を発しているように感じた。
クロは私の背後に回り込んで怯えているようだった。
やはりダメだと思い引き返そうとすると、壁の割れ目が塞がってしまった。
(今まで誘導されていたのか?それとも、私が無意識なうちにここへ向かっていたのか?)
真っ黒な門は私がくぐるのを待ち構えている。
私は覚悟を決めて真っ黒な門へ一歩踏み出した。
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