第15話灰色の門の世界

 灰色の門をくぐった先には先ほどと変わらない岩だらけの世界だった。

 潮の香りがしないところからして海は近くにないようだ。


 少し辺りを散策してみるとかなり地形が変わっており、大きな溝があったりねじれた山がいくつも重なり合って化け物のようになっている。


(なんだこの世界は)


 今までの世界には現実的なものがあったがここは全くそんなものはないように感じる。

 全てがおかしいと言ってもいい。それほど歪んでいる。

 この世界は死者の夢世界だという。ならばこれは全て死者の見る夢の中なのだろうか?それとも心なのだろうか?記憶なのだろうか?

 この世界の場合は心なのだろうと直感的に思った。

 歪んで、ぐちゃぐちゃな世界観は心を表しているようにしか思えない。

 溝は傷、ねじれて重なった山は不満や怒りといったマイナスイメージの集合体とでもいうべきだろうか?

 もしそうなら私の心よりも荒んでいる。


 私の心にあるのは絶望感だけだ。それ以外には何もなかったのだから。感情が動いたことなんて生きてる間にあっただろうか?いや、なかった。


(別の門を探さないと)


 私は灰色の門から左に進むことに決めて真っ直ぐ進んでいった。

 完全に寝てしまっているクロは私が抱き抱えた状態だ。少し腕が疲れてきたが無理に起こしても申し訳ないので自然に起きるのを待ってやることにする。

 起伏の激しい岩場を歩くのは先ほどあの階段を上ったばかりの私には少々厳しい。


(どこかで休憩しよう)


 どこか腰掛けられそうなところを探しながら進んでいると少しだけ地面から盛り上がっている人一人座れそうな場所があった。

 私はその場所に座り込んでクロを膝の上に乗せた。

 しかし随分と歩いた。

 だいぶ疲れが蓄積されているようで、しばらくは立ち上がりたくない。

 私の瞼は重く、今にも目を閉じてしまいそうだ。死人が寝る事なんてあるのだろうか?

 少し気になった私は目を閉じて寝てみることにした。

 死んでいても寝方を覚えていない訳がない。

 あっさりと私の記憶は途切れた。

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