第14話灰色の門

 桟橋から砂浜に戻るとクロを連れて岸壁の階段を登り始めた。

 この階段を登って門だらけの世界に戻ろう。またあの暗い洞窟をたいして明るくもない懐中電灯で照らしながら帰るのは大変だし移動距離もやたら長い。

 階段を下から見上げるとまるで岸壁に錆びた鉄の板が突き刺さっているようにしか見えない。ゆっくりと1段目に足を置いてみる。

 案外しっかりとしている。これなら急に落ちるようなことはないだろう。とはいえ段差が急なのでクロが上るのは大変だろう。

 クロを抱きかかえると私は果てしない階段をながら始めた。




 階段を半分ほど登ったところで足がパンパンになってしまった。

 ……しかし、こんな危なっかしいところで立ち止まっているわけにはいかない。クロは途中から寝てしまったようなので落ちることはないだろうが、もし休憩中に起きられたら大変だ。


 ふと、疑問が頭によぎった。


(何故死んだのに私は疲れているのだろう?)


 普通、肉体がないわけだから歩いて疲れるなんてことが起きるのだろうか?肉体がないのだから筋肉疲労はないはずだ。

 私の頭にモヤモヤとした気味の悪いものが残る。


(早く戻って他の世界を調べよう)


 真実に辿り着くには私自身が動いて調べるしかないのだと影言った。

 私は靄を払うために階段を再び上りだした。



 階段を上りきると小さな小屋があった。

 場所からしてあの砂浜から階段を上がってこないとたどり着けない場所のようだ。なんだかここに導かれたようで気持ちが悪い。


 小屋に入ると小さな灰色門があった。

 どうやら別の世界に繋がっているようだが、私たちの通ってきた青い門いがいにこの世界になる方法があるとは思わなかった。


(行ってみるか)


 私はクロを抱き抱えたまま灰色の門へと入っていった。

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