第8話 暗闇のトンネル

 走って先頭を行くクロを走って追いかけ続けていく。

 死んでいるので全く疲れることはないのだが、本当にクロについて行ってみどりの門にたどり着くのだろうか?

 赤い門の世界と同様に世界の果てがあるのであれば迷ったとしても時間をかければ中央付近にある門にたどり着くことは確実にできるが、もしこの緑の門の世界に果てがなかったらこの世界を長い間彷徨うことになる。


 廃墟の住宅街は消え、先程探索した団地に入った。

 あのマンションからまだあの女の人が自殺し続けているのかと思うときみが悪い。走る速度を上げてさっさと通り過ぎる。


 クロは団地を過ぎてすぐに左に曲がった。

 もうここからどういう道を通れば歩道橋のある場所に出るのかわからない。


 生前ろくに部屋が出ずに暮らしていたからなのか街並みを覚えたり道を覚えることが難しい。

 別に記憶力が悪いわけではないのだが、やはり普段からしないことは身につかないらしい。


 クロの後ろをついていっているとあの歩道橋まで戻ってきた。あとは真っ直ぐ行けばあの薄気味悪いトンネルだ。


 歩道橋から歩き続けて緑の門を通り過ぎ、トンネルまでやってきた。

 私は持ってきた懐中電灯をつけて暗闇を照らす。

 淡いオレンジの光は暗闇に呑み込まれてしまった。

 地面に向けてやると足元は見える。

 心もとない事この上ないがないよりはマシだと思ってトンネルへと突き進む。


 トンネルの中は外と違ってかなり寒いし、とても怖い。入って早々後悔した。

 クロもあたりを見渡しながら私の後ろにぴったりとついてきている。クロも怖いのだろう。


 とにかく早く抜けようと思うが、懐中電灯の明かりが心もとないため走ろうものなら何も見えなくなるだろう。

 今は気持ちを落ち着けてゆっくり歩いて先に進む。


 しばらく歩いていると地面のコンクリートがボロボロに崩れ、土や砂利が見えるようになった。

 そして、鉄のような匂いがする。


(一体なに?)


 私は懐中電灯を前方へと向けた。


「ひっ!」


 私は短い悲鳴をあげてその場に立ちすくんだ。クロはブルブル震えて私の後ろに隠れている。


 そこにいたのは真っ赤に染まった巨大なゼリーのような生き物。

 生物は私たちをジーとただ見つめていた……。

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