第7話その場の考え
マンションから駆け下りるとクロを連れて早足で遠ざかった。
自殺を繰り返してもその先には何もないはずなのに
何故?
何故?
何故?
死ねば楽になれるというのは私の思い違いでしかないのか?
死んでも辛いのか?
「キャン!キャン!」
クロの鳴き声でハッとする。
クロを見ると不安そうな顔でこちらを見上げている。
「大丈夫、大丈夫だよクロ」
私はしゃがみこんでクロを抱きしめた。
クロは目を閉じて安心しているようだ。
しばらく抱きしめると、頭を撫でてクロを離した。
後ろを振り返ると先程まで探索していたマンションは遠く離れた場所にある。
いつの間にやらだいぶ離れていたらしい。
前を見ると古びた住宅街が広がっていた。どの家も半壊、もしくは倒壊している。
(本当になにがあったのだろう?)
そう思いながら私はまだ安全そうな半壊した家に入っていった。
家の中は衣類や布団が散乱している。家の左半分は崩れているので近づかないように散策する。幽霊でも痛いものは痛いことは赤い門の世界で知っている。
タンスの中や棚を見てみるが、中に入っているのは使えそうにない筆記用具や書類、工具などが入っている。
(別の家散策しようか……)
「キャン!」
クロが布団の下を見つめながら鳴いている。
「どうしたのクロ?」
クロの見ている布団をどかしてみると懐中電灯があった。
かなり古い懐中電灯でスイッチを入れるとオレンジ色のあまり明るくない光を放った。
(こんな懐中電灯でも暗い所を進むなら心強いかもしれない……。そうだ、あのトンネルの中に行ってみよう。怖いけど……)
私は懐中電灯のスイッチを切ってトンネルへと戻ることにした。
私はその場の考えでそう決めた。
しかし、どう帰ろう?
今の位置がイマイチわかっていない。
「ねえクロ?さっきの歩道橋の場所覚えてる?」
「キャン!」
クロは大きく頷いた。
「そこまで案内できる?」
「キャーキャー!」
クロは私の周りを回ると廃墟から出て行った。
私はそれを追った。
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