第5話 緑の門の世界

 暗い視界が明るくなり、歪みもなくなると緑門の世界が見えてきた。

 どうやら森の中にいるようだ。


(やはり門の色が世界の色を表しているのか……)


 地面を見てみると舗装されたアスファルトだ。

 長年誰も通っていないかのように苔むしていて、所々ヒビが入っている。

 周りは木々に囲われている以上、この道を進む以外にはないだろう。


「行ってみようか?クロ」


「キャー」


 私は薄暗い森の中を歩き始めた。




 薄暗い森の中は何も聞こえてこない。

 動物がいないのか、それともたまたまなのかはわからないが、赤い門の世界の事もある。油断しない方がいいだろう。

 クロも突然道から外れたりせず、私の隣について来ているだけだから安心できる。


(しかし、ずっと歩いているけど何もないな。舗装された道があるのなら建物があってもおかしくはないはずなのだが……)


 そんな事を思っていた時だった。目の前に古びた手掘りのトンネルが姿を現した。

 トンネルの中は真っ暗闇で、出口が見えない。明かりも無しにこの先に進むのは恐ろしい。

 それに、なんとも形容しがたいような不安感に襲われた。


(ここは一旦引き返そう)


 私はクロを呼び、すぐさま踵を返してトンネルから離れた。

 私はそのまま門の所まで戻っていくことにした。




 門の所まで時間をかけて戻ってきた。

 よく見ると門の後ろにも道は続いているようだ。

 恐らくこのまま門をくぐることなく向こう側へと歩いていけば何かあるのではと思った。

 門と木々の少しの隙間を抜けてそのまま真っ直ぐ進んで行く。

 舗装された道は進むにつれて綺麗になっていき、次第に道幅も広くなった。


(一体ここはどういう世界なのだろう?)


 疑問に思いながらもそのまま進んでいく。

 すると、今度は歩道が現れ、信号まで現れた。

 しかし、車が通っているわけでもなく、人が歩いているわけでもなかった。

 ただただ辺りには木が生い茂っているだけ。

 しかし、私はそんなに気にならなかった。

 人のいる世界なんてたまったものではなかった。また虐められる。そうとしか考えなかった。

 人なんて、いなくなってしまえと何度思っていたことか。

 私は少しだけ死者の夢世界が本当に夢のような世界なのではないかと思えるようになった。

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