第4話 帰還

「………い!……おい!…………大丈夫……お嬢……。お嬢ちゃん?」


 聞き覚えのある声に反応して私は目を覚ました。まだ攻撃された背中が痛い……。

 目を開くとあたりは門だらけだった。

 どうやら赤い門の世界から脱出することができたらしい。


「おお。目が開いた。やぁお嬢ちゃん。お目覚めの気分はどうだい?……まあ良くはない……か?」


「影……」


「キャーーー!キャーー!」


「クロ?」


「キャー!」


(よかった。クロも無事みたい……)


「随分と心配していたよ?どうやら随分と君お嬢ちゃんに懐いたみたいだね。夢世界の生物は中々心を開かないんだが……。境遇が似ていたからなのかな?……さて、どうだった?」


 影は薄ら笑いを浮かべてこちらを見た。どうやら赤い門の世界での出来事を聞きたいらしい。


「確かに私も見覚えのある風景でした。世界は真っ赤でしたけどサバンナに似ていました。でも生き物はここにいるクロと大きな黒いライオンみたいな猛獣しか見てないです」


「そうかいそうかい。そりゃあじっくりと世界を見てきたみたいだね。まあ、出なきゃ猛獣となんかと出会わないか。……何にしてもよく無事に帰ってこれたよ。もしやられてたら大変だったよ?」


「どういうことですか?」


「そりゃあ死ぬより恐ろしい目に遭ってるさ……。ここは死者の夢世界だぜ?死者は死ねない。そういうことさ」


(つまりずっと苦痛を味わい続けるってことなのか……)


「例外もあるけど……そりゃまた後で話すことだね。……さて、お嬢ちゃん?これからどうする?」


「どうすると言われても……」


 また違う門の世界に行くかここでじっとしているかの二択。

 ここでじっとしていてもクロがこの世界に来ることができるということは門をくぐりこの世界へと猛獣が来る可能性もある。ということは一概に安全とはいえない。それに、影が私に危害を加えて来る可能性もある。信用もできない。

 だからといって門をくぐり別世界に行っても安全かどうかはわからない。

 ……どうする?


「悩むよねそりゃあ。あんなのに襲われたらそりゃ誰だってそうなるさ。まあじっくり熟考することだ。決断して、その結果どうなろうとも全てお嬢ちゃんの責任なんたからね……」


 そういうと影は何処かへと行ってしまった。


(……考える……考える……考える……考える…………考える)


 どれくらい考えたのだろうか?いつのまにか背中の痛みはなくなっていた。


(違う門の世界に行こう)


 私は決断し、行動した。

 私は緑の門の前に立った。理由なんてない。ただわからないのなら直感で選ぶしかないだろうと思っただけだ。


「クロ、行くよ?」


「キャー」


 私は緑の門に入っていった。

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