ようこそ、死者の夢世界へ。
第1話 夢世界
……意識がある。
私は試しに目を開けようとしてみた。
(目が開いた……どういうことなの?私は死んだはずじゃあ?)
私は困惑しながらも周りを見渡してみた。
地平の先まで続いている平行な灰色の地面。
空は私が死んだ時と同じように薄明るいが太陽は見えない。
それより気になるのは地面から竹のように生えている無数の門だ。
門の中は何やら歪みのようなものが生じている。
「一体ここは……」
「やあ、気がついたみたいだね。お目覚めの気分はどうだい?お嬢ちゃん」
男性のような低い声のした方を向いてみて驚いた。
そこにいたのは全身真っ黒な人型の生き物だった。身長は160㎝くらいだろうか?私より少し背が高く、体格や声からしても男性ということでいいのだろう。
「あなた……誰ですか?」
「うん?誰?誰ねぇ……。お嬢ちゃんにはどう見える?」
「……影に見えます」
「影か。じゃあそれなら"影"と呼んでくれ」
どうやらこの影には名前という名前は無いようだった。
「ところで影さん。ここはどこなのでしょう?現実世界ではないですよね?」
「うん?あーそうだね。まだこの世界について説明していなかった。すまんすまん。
さて、この世界は"死者の夢世界"と呼ばれる一種の異世界とも言えるし、現実世界とも言える。異世界とも言えないし、現実世界とも言えない。かなり曖昧な世界なんだよ」
死者の夢世界。
死者のみが来れる夢の世界ということなのだろうか?単純に考えればそうなのだろうが、やはりさっぱりわからない。
「まあわからなくて当然さ。ここにいる奴らもみんな詳しくはわからないから気にしなくていい。……そうだな。お嬢ちゃんにもわかる話をしよう。門があるたろう?あの先には様々な不思議な世界が広がっている。多分お嬢ちゃんが見たことのある世界もあると思うよ?試しに一番近くの赤い門をくぐってみなよ?」
影は自分の後ろの門を指差した。
この場所がどういうところなのかはっきりとわからない以上、ここでじっとしていても仕方がないだろう。
私は影に言われた通りに赤い門をくぐってみることにした。
門をくぐると目の前が歪み、視界が暗くなっていった。
どうやら別世界に移動するときはこうなるようだ。
この視界が戻った時、私はどこにいるのだろう?
赤い門というところから血を想像してしまったが、まさかそんな世界にたどり着くのか?
私は恐怖と不安を抱えながら赤い門の世界へと入り込んだ。
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