おととい来やがれ!

ノーバディ

第1話

「すいません、言われた通り来ました」

その男は突然うちにやって来た。

「はぁ、誰?」

「あなたこそ誰なんですか?」

「何言ってんだよ。何しに来たんだ?」

「それを聞きに来たんです。

僕になんの用なんですか?」

「はぁ、何言ってんの?

訪ねて来たのはそっちだろ?」

「あなたが来いって言ったんでしょ」

「来いも何もあんたにあったの今が初めてだぞ!」

「そんな事はいいんです。一体何の用なんですか?」

「知らねえよ!そっちが勝手に来たんだろ!」

「あなたが来いって言ったんじゃないですか」

「言ってねえし!」

「言いました!

だから何の用なんですか?それを聞くまで戻れないんです」

「知らねえよ、いいから帰ってくれ」

「戻れません」

「帰れ!」

「戻れないんです!」

「知った事か!」

そんなやり取りが2時間も続いた。

このままじゃらちが開かない。とりあえず通報して警察に持ち帰り戴いた。


次の日、仕事から帰るとその男は玄関で待っていた。

そいつは俺の顔を見るなり泣きながらすがりついてきた。

「お願いします!どうか教えて下さい。

僕はなぜここに来なけりゃいけないんですか!」

少しかわいそうになってきたが、全く心当たりがない。

「いや、俺にもさっぱり分かんないんだよ。もういいから帰れよ」

「戻れ無いんです。

お願いですから教えて下さい」

「何をだよ」

「だから、なぜ僕がここに来なけりゃいけないのかですよ」

幾ら考えても分からない。そもそも誰がここに来いって言ったんだ?

そいつは泣いてばかりで話にならなかった。

仕方なくまた警察にお持ち帰り戴いた。


次の日、俺は夜明け前に起き出した。

奴が来る前に逃げ出そう。

今夜はビジネスホテルにでも泊まるか。

そんな事を考えながら玄関のドアを開けた。

「お願いします。教えて下さい」

「うわぁあああ、出たぁあああ!」

「お願いします。お願いですから」

「ひ、ひやぇあぉりゃあ」

「お願いします」

「知らねえよ!帰れ!」

「お願いします。お願いします」

「帰れぇえ!おととい来やがれ!」

「分かりました、そうします。

その時はお願いしますね」

男は怨めしそうに帰っていった。

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