異世界に転生した俺は地上最速で魔王を倒す!!

通 行人(とおり ゆきひと)

第1話、そして最終話

 魔王が支配する世界。そこに俺は降り立った。


 トラックに轢かれて死んだ俺は、『神』というものに出会い、『力を授ける、魔王を倒せ』と言われてこの世界に送り出されたのだ。俺は自分の手を見た。どうやら、姿形は生前と変わりないようだ。


 目の前には、逃げ惑う人間達、そしてその向こうに巨大な黒い生物。あれが……魔王か。


 俺は逃げ惑う人間達の間を走り抜け、魔王の前に立った。


 逃げ惑う人間達が俺に気付いた。


「な、何だアイツ!?」

「魔王に立ち向かうつもりなのか……!?」

「無茶よ!! 殺されるわ!!」


 ゾウのように巨大な魔王は、俺を見下ろしながら笑った。


「ククク……面白い、貴様……この私と戦おうというのか? この最強の魔王と!!」


 ……やれやれ、無駄口の多い奴だ。俺は地を蹴り、駆けた。


「なっ!? は、速い!?」


 ……遅い。遅過ぎてあくびがでるぜ。俺は魔王の攻撃を軽々と躱して飛びかかった。


「ス……スゲェ!!」

「何て速さだ……あの最強最悪の魔王が手も足も出ずに翻弄されてるぞ!!」

「奴は一体何者なんだ!?」


 ざわつく人間達を尻目に、俺は魔王を仕留めた。やれやれ……何だか拍子抜けもいいとこだ。これならアフリカの草原でガゼルを捕まえる方が、よほど難易度が高い。


 そんな事を考えていた俺に、一人の人間が近づいてきた。


「魔王を倒しちまうなんて、スゲェよアンタ!! 良かったらステータスを見せてくれないか?」


 ステータス? 何を言ってるんだコイツは?


「ほら、《ステータスオープン!!》って唱えればいいんだよ。こんな風に」


 男が『ステータスオープン』と唱えると、男の目の前に謎の模様が浮かび上がった。


 トニー


 レベル:30

 攻撃力:5

 防御力:4

 体力 :6

 魔力 :0

 素早さ:7


 職業 :農夫


 種族 :人間(ヒューマン)


 ふむ……よくわからないが、とりあえずやってみるか。


 俺は言われた通りにやってみた。


 先程と同じように、俺の目の前の空間にも、謎の模様のようなものが浮かび上がった。


 ハルオ


 レベル:1

 攻撃力:20000

 防御力:18000

 体力 :9800

 魔力 :7800

 素早さ:MAX


 職業 :肉食目ネコ科


 種族 :チーター!!


 



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