異世界をドローンの視点で旅する実験

枯三水

第1話「ヴィンテント村」

 異世界ドローン視点へようこそ!

 オープニングナビゲーターは私『M3=ミサ』が務めさせていただきます!


 ここでは滅多に見られない異世界を俯瞰した視点と接近した視点で眺める事が出来ます。


 村人の生活やたわいのない日常、夜中に暗躍する怪盗や魔王討伐を目指す勇者も覗けるかもしれません。


 場所は指定出来ますが、時代や日時は無造作に選ばれますのでご了承下さい。


 それでは早速行きたい場所を選択して下さい!


『デニス村』

『ヴィンテント村』←

『ポーシャ村』

『ザカンド村」

『サワラ砂漠の村』

『スタスキー集落』

『サイカンの街』

『サイカン地下街』

『ポートバハ港町』

『大海航路に浮かぶ島』

『七帝十龍城』

『バスキア洞窟』

『???』※

『???』※

『???』※


 ※はまだ指定出来ません、そのうち行けるようになるかもしれないので気長にお待ちください。



 ヴィンテント村に行ってみますか?

 YES←

 NO


 それではヴィンテント村上空に視点を飛ばします!ナビゲートはこのまま私が務めさせて頂きます!


 それでは良い旅を!


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 早速気持ちの良い空ね!


 天候は晴れ、空は青く羊のような雲がいくつか浮いているだけ。

 遠くには山が見えるわ。そこから街道が一本、村まで伸びている。


 下に見えるのがヴィンテント村ね。

 まるでドーナツみたい!

 村には川が通っていて、東西に抜ける道と十字の関係で南北に走っている。

 上から見ると四当分されているような形ね。もうお腹が減ってきたわ。


 真ん中が広場になっていて、木箱を置いた商店が円状に並んでいる。果物や野菜なんかが安く手に入りそう。

 その広場から放射状に三角屋根の家が立ち並んでいる。

 きっとお昼時ね。煙突からは煙が空に伸びているわ。


 外側はどうかしら。


 村を囲うように柵が張られているわ、東西には入り口となる門が構えてある。

 小さな村でも簡単な備えはしてあるのね。

 柵の外には幾つか畑があり、牛や馬の姿もある。

 放牧されているのねきっと、村の近くにはこれも柵で覆われた小屋があるから普段はそこに牛や馬がいるのよ。

 あの小屋を見に行こうかしら?


 待って!


 馬車が来るわ! 街道を真っ直ぐ村に向かって走ってる。


 沢山の荷物を積んだ箱馬車よ。西門から村に入るみたい。


 門の前には衛兵がいるけど多分村人ね。シンプルな鉄の槍を持って椅子に座りながら見張りをしているわ。


 馬車に乗った商人さんが衛兵に挨拶をしている。顔馴染みよきっと。

 二、三簡単なやり取りをして村の中に入って行く。


 馬車を追いましょ!


 馬車の音が聞こえたのかしら、女性達が家から顔を出してる。家事の最中だったんじゃないかな。


 もう商人さんは広場に着いてるみたい。馬車を降りてホロを開け荷物を広げてる。

 到着を待っていた村人達も広場に集まりだしてるわ、これから商売が始まるのね。


 近づいてみましょう!


 彼の主な商品は袋詰めにした塩や魚の干物のみたいね。海が近くにないから村の人達は商人さんが頼り。

 他にも瓶や、お酒、宝石のような石や剣、盾、鎧、兜があるみたい。きっと盗賊や魔物への備えの品だわ。


 村人が持ち寄っているのはヴィンテント村の名産かしら、変わった刺繍の入った布や干し肉、薬草、野菜やお酒みたい。


 物々交換で商人さんと村人は物資をやり取りしているのね。

 あら貨幣も使ってるわ、あの村人は銀色の貨幣数枚と酒樽を交換してる。


 取引も落ち着いてきた頃かしら。


 少し変わった村人が商人さんに近づいてきたわ。

 上から下まで黒一色の女性。

 とんがり帽子は被っていないけれどその姿は魔女ね!

 でも優しい魔女よきっと。

 村人達と関係は良好だもの、黒い女性に村の婦人達は挨拶をして、女性の方も朗らかにやり取りをしている。

 私も魔女って憧れだわ、もちろん良い魔女よ。


 商人さんどこかソワソワしているみたい。

 黒い女性が手に持っているのは、瓶に入った色の付いた液体と薬草。

 きっと特注の薬品や凄い効果のある薬草ね。


 女性はそれを商人に渡して……商人さんからは荷物は受け取らないのね。あらもう元来た道を戻って行く。


 高い所から俯瞰してみましょ。


 どうやら黒い女性の家は村の北側の端、薬草畑と木に囲まれた所みたい。

 途中何人か村人に声をかけて、長くない立ち話をしながら家に帰っていく。

 村の人に慕われているのね。


 商人さんは馬車を広場に置かせてもらって、次は押し車にいくつか商品を乗せてる。村の南側に行くのね。

 訪問販売かしら? 商人さんが伺うお家からは足腰が弱そうな人が出てくるわ。彼の顔を見ると快く迎え入れている。


 商人さんは老人のお宅に入ってしまったわ。


 村の川沿いに子供達がいるわ、近づいてみましょう。


 洗濯をしていたのかしら、川岸にある木に紐がくくられてそこに色とりどりの布が掛けられている。

 こういう風景は少し素敵よね。その国の生活感が垣間見れる感じっていうのかしら。


 さっき見た刺繍の入った布もあるわね。

 村全体の産業なのかしら。子供達は暇を持て余して、釣りや水遊びをしているわ。


 男の子が弦のある楽器を弾いている。ギターというよりリュートかしら?

 まだ習いたてで苦戦しているみたい。


 あら、広場の方から誰か来る。


 派手な衣装の男よ。子供達がその男の周りに集まってる。

 この村に似合わない男ね。

 楽器を男の子から借りて、派手な男が手本を見せている。子供達は興味津々にその派手な男を見ている。

 きっとこの村に来ている芸人さんね。


 一通り弾き終えて、楽器を男の子に返して村の中に消えていく。

 ふらっとしているのも芸人らしいわ。


 村の北側を見てみましょ。


 商人さんだわ。

 ちょうど魔女の家に荷物を置いているところ。

 塩を数袋と酒樽一つにいくつかの干し魚と鉱石ね。それを扉の前に置く。

 女性一人じゃ持てないからしっかり家まで届けてあげるのね。


 魔女が出て来た。


 いま気づいたけど、綺麗な女性ね。

 商人さんが荷物を中に入れるのを手伝ってる。

 全て家の中に運んだみたい。

 あら、商人さんが懐から何かを取り出して……魔女に差し出したわ。


 指輪よ!

 青く透き通る宝石の付いた指輪を魔女にプレゼントしているわ!


 なんか素敵じゃない!


 商人さんのプロポーズの瞬間ね。


 あら、でも黒い服の魔女はそれを受け取りたくないみたいね。

 魔女は商人さんに何か言葉を伝えて、家に戻ってしまった。


 どこか気落ちしたように見えるわね商人さん。

 薬草畑の向こうで子供達が笑っている、商人さんがっかりね。


 酒場かしら? 商人さんが入っていくわ。


 まだ太陽が顔を出しているけれど、間も無く夕刻ね。


 外から見ても中は賑わっているわね。酒場は村の最大の娯楽だっていうからそれも当然ね。


 酒場の中に入ってみましょ!


 先ほど商人から酒樽を買っていたのはこの酒場の店主だったみたいね。

 商人さんは暗い顔してカウンターに座っている、店主の目の前ね。


 彼の前にお酒が出てくる。ビールを頼んだみたいね。この世界ならエールと言った方が正解かしら。

 店主はパンとシチューも彼に出したわ。私も一緒に頂きたい!


 商人さんきっと店主に愚痴をこぼしてるのよ、エールを煽って二杯目を頼んでる。


 酒場のお客さん達が何やら色めき立ってるわ。


 また出た!


 二階から降りてきたのはさっきの派手な衣装を着た芸人じゃない!それも五人もいる!


 この酒場は宿も兼ねているのかしら。

 芸人達が何か披露するみたいよ。


 川にいた芸人が楽器を奏でてるわ。


 素敵な音楽ね。メランコリックで、エキゾチック!


 それに合わせて色っぽい服を着た女の人が美しく舞っている。

 こういう娯楽はこの世界では贅沢な事の一つみたいね。皆んな楽しんでいるわ。


 他の芸人さんも何か準備しているみたい。用意してあった装置を舞台にセットして……。


 人形劇を始めるのね。


 有名な恋愛劇の一幕よ。


 バルコニーで美しい女性が恋のため息をついている。

 その相手の男が女性の前に躍り出る。

 叶わぬ恋なんてない。

 そう男は言ってのけ、女性に手を差し出す。

 この恋愛の先が悲劇だとしても今だけは、と男の手を握り返す女性。


 酒場の寸劇にしては良く出来ているわ。商人さんの心も少しは癒えるんじゃないかしら。


 あら、商人さんもう勘定を済ませて酒場を出て行く。

 走ってお店を出るなんて、よっぽど大事な用があるのね。


 向かう先はきっと魔女の家よ。


 人形劇はまだ続いているけれど、外に出てみましょ。


 もう夕刻ね。辺りがオレンジに染まっている。


 上から村を眺めましょ。


 ほら素敵!

 太陽に染められた川が赤い糸のように村を通っている。

 商人さんがその糸を辿るように、北の端にある女性の家を目指している。


 物語の一ページみたい。

 これはハッピーエンドの予感ね。


 家の扉を叩き魔女を待つ商人さん。


 魔女が出てくる。

 商人は魔女の手を取り、もう一度懐から指輪を渡し何かを伝えている。


 魔女も今度は手を引かなかい。

 静かに頷き、指輪をはめる。


 商人は女性を抱きしめ、顔を見合わせ、そして唇を重ね……。



 これ以上覗くのは野暮だわ、村の酒場に戻りましょ!



 もう夕刻が闇に呑まれ始めてる。間も無く夜ね。


 あら、西側の門から衛兵が走ってくるのが見えるわ。

 手に持った鐘を鳴らしながら街を駆けてく。

 緊急事態かしら、足がもつれそうになっているわ。



 西門に行きましょう!


 あそこに影が見えるわね。


 あれは魔物!


 五体くらいいる!『マンティコア』よ!ライオンの身体に人の顔が付いた人喰いの魔物。

 動きが素早く爪や牙、棘の付いた尻尾が人を襲うの。


 西門は閉まっているけど、この魔物にとっては関係ないわ。


 柵を引きちぎり村に侵入していく。


 衛兵が村人に知らせてる。武器を持った村人の兵団がマンティコアの元に向かってる。


 これでマンティコアを退治できれば良いのだけれど。


 村中が慌ただしく動いてる。

 西側に住んでいた人々は衛兵の警報で川を渡り東に避難してる。

 西側にはもう殆ど住人は居なそうね。


 衛兵が火のついた槍と背の高い盾でマンティコアの進撃を緩めてる。


  マンティコアが一体村に侵入したみたい。


 マンティコアは真っ直ぐ北に進んでる。

 魔女の家がある方!


 魔女の家はどうなってるかしら? 行ってみましょう!


 商人さんの姿がない。さっきまで一緒にいたのに。

 魔女は家から不安そうに外を眺めている。


 商人さんはどこかしら?


 上から探しましょう。


 商人さんは広場にいるみたいね。


 異変を感じて馬車の馬を逃したんだわ、それに荷物の武器を装備している。戦う気ね。

 兵団にも売り物の武具の使用を許可してる。


 マンティコアが広場を通る!

 向かう先は魔女の家!


 商人さんもすぐマンティコアを追いかける!



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 私が案内出来るのはここまで、ここから先はあなた一人で見てきてね。

 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 魔女の家が……燃えている。



 商人は無我夢中に燃える家の中に入って行く。


 火は一階をほとんど燃やしてしまっていた、本棚や吊るされた薬草は跡形もない。


 一階に魔女の姿はない。

 二階に逃げたのだろうか。


 その時、マンティコアが商人に襲いかかってきた!


 商人は弾き飛ばされたが鎧のおかげで大した怪我はないみたいだ、態勢を整える。


 商人はマンティコアと対峙するように距離をとっている。


 マンティコアは鋭い爪と牙で襲いかかる。

 剣で防ぐ商人。

 しかし不気味な顔が商人の腕に噛み付く。


 それを足で無理矢理引き剥がす。

 追撃で剣を振るう、が当たらない!


 火の勢いが増してる。


 家が崩れそうだ。


 マンティコアは棘の付いた尾無茶苦茶に振り回してる!

 商人の剣が弾き飛ばされる!


 武器の無い商人にマンティコアが飛びかかる……!


 魔女が二階に上がる階段から姿を見せていた。


 マンティコアもそれに気づく、そして商人ではなく魔女に向かって走り出す!


 商人は叫んでいた。


 魔女にマンティコアが喰いつく、その瞬間……


 爆発が起きた。


 吹き飛んだのはマンティコアだ。


 魔女は手に持つ石をマンティコアに投げつけていた。

 爆発する石なのだろうか。


 商人はすぐ魔女の元に駆け寄ろうとした。

 しかし商人と魔女の間には勢いの増した火が壁となり二人を近づかせてくれない。


 飛ばされたマンティコアもまだ息があるようだった。


 魔女は商人に瓶に入った液体を投げて託した。

 商人と魔女は何か言葉を交わしている。


 商人はマンティコアに向き直り、まだ横たわる魔物に向かってその液体をかけた。

 魔物は液体に触れた瞬間、灰色の石となり崩れ落ちていった。


 商人は魔女に何か伝えると、外に走り出した。

 魔女も二階に駆け上がる。


 火の勢いは強く、もう家は数分も持たないだろう。


 魔女は二階の窓から顔を出す。


 商人はすぐ近くの木に登っていた。魔女に手を伸ばす商人。

 しかし後少しの所で届かない。


 商人は身振り手振りで魔女を促す。


 魔女は意を決して、窓から商人に飛び込んだ。


 次の瞬間二階が炎に包まれる。


 木から魔女を捕まえた商人はそのまま落下し女性のクッションになっていた。


 二人共助かったようだ。


 魔女は涙を流しながら商人を抱きしめていた。

 商人も魔女を抱き返していた、がその目の先に魔物の姿が写る。


 四体のマンティコアだ。


 今二人に武器は無い。

 絶体絶命のなか、商人は魔女を強く抱きしめる。


 マンティコアが飛びかかってくる。

 もう駄目だ、商人は目を瞑った。


 しかし魔物の攻撃はやってこなかった。


 商人と女性の前に酒場にいた芸人達が立ちはだかっていた。


 芸人は商人に顔を向け、ニコッと笑う。

 剣を携え、マンティコアに向かう。


 彼等は想像以上に強かった。


 マンティコアの早く鋭い爪は一度も当たらず、逆に芸人は的確に剣を当てていく。

 四体いたマンティコアはものの数分で倒せれた。

 どうやら相当手練れの芸人らしい。


 二人はようやく本当に助かった、と安堵の息を漏らした。


 外はもう闇が支配していた。

 女性の家は燃えてしまったが、村人に犠牲者は出なかったようだ。


 燃える家を見つめる魔女。

 商人がその横に立っている。

 商人がそっと女性の手を握る。


 もう夜だ。


 ヴィンテント村の一日が終わろうとしていた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 もう一度始めから

 場所の選択に戻る←


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 おかえりなさい! 『ヴィンテント村』はどうでした?

 楽しかった? つまらなかった? 思っていたのとちがーうなんていうのもあるかもしれないわね。


 楽しかった人はまたお暇があったら来て下さいね。


 次はどこの村に行こうかな。


 要望があればその村に行ってみたいと思います!

 改善点があればご指摘下さい、出来るだけ探ってみます。


 それではまた「異世界をドローンの視点で旅する実験」で会いましょう!


 バイバーイ!























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異世界をドローンの視点で旅する実験 枯三水 @ssaannkkaa

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