黒い紙のタバコとかトレジャー以外に知らない

タバコ屋兼家に帰ると、両方がないって、よくある話だよね



……


「んなわけあるかぁぁぁあああ!!!何で家がねぇんだよ!?」


看板が刺さってるだけの更地になった場所の、目の前で、俺は、叫ぶ




────時は遡り、1日前


闘技場にて開かれた武闘大会は、多少のアクシデントがあったにも関わらず日程通り全て終わらせ、優勝者も決まった


優勝賞品のなんかわけわからん時計は、しっかりと優勝者に渡され、そいつは迷うことなく粉々に破棄した


まぁ優勝したのは俺だけど


記憶が完全に戻った俺にとって”時計”は害悪でしかない

そのわけわからん時計は延命した分、必ずと言っていいほど寿命を迎えないと死なないのだから


破壊した時、爺の「え、なんで?」といった唖然とした顔を拝めたのは新鮮で楽しかった


Zの坊主は準々決勝までは行けたが、近接故に遠距離相手には攻撃ができず、タバコで強化ブーストしても歯が立たなかった


結果はベスト8、まぁよくやった方じゃないかな


iに関してだが……こちらは少し問題が起きた


なんと家出した


「私はカンナギです」とか言いながら、切断された片腕を摩りながら俺の目の前から去ったのは印象的だった


まぁ、俺の記憶が戻った時点でi……いや、巫の扱いは変わるからな


まぁうちの孤児院の方針は『来る者拾い、去るもの追わず』だからな



改めて言うが、俺は記憶が戻った


この世界に来る前、来た後の対処、この世界への施術、俺自身の封印


当初の目的では『メイン』…今で言う『サブ』の調停が目的だった


それが何故か、金龍ティアの誤解で俺を封印する方向へ

そしたら『メイン』が無くなり『サブ』と改名

表向きはテロ組織、裏では陰謀を企む『悪』となった


記憶をなくしても体は覚えていたのか、『クイーン』の五姉妹との接敵、『キング』との対面も果たしていた


敵対した、話した内容はどれも金龍ティアから受け継いだ罵詈雑言で、正義の味方とは程遠い煽りあいの末、ボコボコにした


記憶が戻った今もその行動は自画自賛したい



時を戻そう


話を戻すとして────家だ


無い


更地なのだ

真ん中に看板が突き刺さってるが、読みたくない

金龍ティアのありがたい言葉が詰め合わせているだろうが、読みたくない


『…読みます?』


黒のフード付きロングコートに変身したクロがそう聞くが…


「……よし、孤児院行くぞ」


『読みますよ、えーと…』


「クロ、お前そんな性格だったか?」


『話進まなくなるからでしょ!?今から孤児院行く描写は省かれるかもしれませんが、マスターの足だと4時間かかる場所にあるんですよ!?しかも徒歩!!』


「あー…わかった、悪かった。だから読め、読んでくれ、読んでください!」


『もー、最初からそういえばいいじゃないですか…内容はこんな感じですね────』


”クソ親父……いや、黒獅か?お前の店は預かった。返して欲しくば『ウェルシア国』に来い”


……これ遠回しにタバコ屋廃業しろって言ってねぇか?


まぁ、行って金龍ティアの面拝んで当初の目的をこなせば良い、それで済む話だ


そんな拠点タバコ屋なくても目的なんて今やれって?

拠点無しで作戦進める犯罪者やテロ組織がいると思うか?

俺は思わないね


…なんで犯罪者グループを手本にしたんだ俺は


境遇が似てるのだろうか?

やかましいわ




ふと、クロから報告が来る


『マスター、独り言中すいません、来客のようです』


クロに言われ、看板から目を逸らし顔を上げる


来るは大型二輪バイクにまたがる亀じじい

名前は…玄じいとか呼んでたっけ俺


「よう、じいさん。悪いが店じまいだ、夜逃げじゃねぇよ?休業だ」


「ふん、何度もここに来ておるから昨日の時点でわかっとるわい…要件はそれではない」


じいさんで通じたところ間違いないようだ


俺は別件を聞き出す


「何の用だ、女連れて歩く姿が似合いそうなのに、ボッチなんてよ」


「人のこと言えた義理か?お前さんもではないか……話を戻すぞ?────”破壊英雄”」


なんか懐かしい響きだな、破壊英雄とか


壊すことしかしてないのに英雄気取りか、いや俺の事だけどさ


「その名を出すってことは、俺の過去バナか?」


「……」


ふざけた面をするな、とでも言いたいように睨み、殺意を振りまく玄爺


無理もないか、大戦時に爺の奥さんを殺したのは俺だから


「じいさんの奥さんか?悪いとは思ってる────」


「わしも吹っ切れたつもりじゃったよ、大戦中に夫婦揃うて出兵なんて有り得ぬし…しかし、戦争するにも人は必要じゃった」


人的資源とも言うべきか、戦争中は物資や軍事に、人が必要だ


故に子供は戦争事の教育され、大人は出兵される


成人、老人関係なしだ


「言い訳するがあれは俺の────」


「そうじゃ、わしを庇った妻が悪い。だがの…」


なんで俺の言うこと遮るかな、この爺


大戦中、俺の目の前に偶然、そう偶然、玄爺が居合わせたことがある

俺からしてみればなんてことは無い、”邪魔するやつは倒す”だった

俺自身に敵対心はなかったので、突っ込んできた拍子に返り討ち程度に発砲


なら致命傷で済んだはずの1発は、妻が庇い、当たり、死んだという経緯だ



「やはり、仇討ちはせねば死ねぬのだ…少しばかり胸を貸せ、”破壊英雄”」


やはりと言うべきか、根に持っていたことに驚きはしない


しかし、玄爺だ

大戦に、しかもその最前線に参加するほどの実力もあった


負ける気はしないが、勝つ気も起きない


大型二輪バイクから降りる玄爺を眺める


身長は165と人類の平均身長より少し低いか、だが甲羅を背負う異人種となれば、それは平均的か


甲人種────、甲羅を持つその戦士は、この世界からすれば最硬度の防御力を持つ


甲羅は骨だ、昔は泳ぎやすさを優先しての機能を持っていた。甲人種はさらに進化し、防御に適応、海中戦ではその防御を破る者なし、と言われるほどだ


そんな甲人種である玄爺は、陸の生活を満喫している


故に、ハンデは必要かと思った


「”破壊英雄”、────手ぇ抜くんじゃねぇぞ?」


────あぁ、やっぱ

────必要だな、ハンデ


玄爺は背骨で構成された甲羅と背中の隙間から、器用に納められていた刃渡り30cmの剣鉈を両手に持った


と、同時に走り出す姿を見る


初速はそれほどない、目に見えるスピードで近づいてくる玄爺を横目に、俺はコートを脱いだ


「クロ、ダブルバレルショットガンだ」


『了解!』


コートの下を黒いワイシャツで着こなす俺は、片手に持つ黒黒とした一丁のダブルバレルショットガンに弾を込める


「悠長なものだな!”破壊英雄”!!」


「言ってろ、ジーさん」


俺から見て、右から回り込んでくる玄爺は剣鉈を横薙ぎに繰り出す


玄爺は剣鉈を両手に持っていた為、右足で1本を踏み台にし、俺は跳躍する


「ふん!くうへ行くか!」


1本は地面を抉り、もう1本は俺へと追撃する


「しっ!」


俺は一呼吸で刃渡りを片手で叩き、軌道を逸らすことで、その剣鉈の攻撃を避けた


着地し、玄爺から距離を取るが直ぐに追いつかれる


「何たる芸当!油断ならんな!」


「玄爺も衰えてなくてよかったよ!」


大戦中の記憶を思い出すのは、亀のような低姿勢の動きに、繰り出される剣鉈の連撃


鳥千甲万つるせんねんかねまんねん!」


速度のある1本の剣撃は、俺の狼頭の鼻先を掠める

もう1本の剣撃も脚を狙うが、俺は足先を浮かせる事で避けた


流れで顎を狙うが、顔を横にずらすことで紙一重で避ける玄爺


俺は後転し、地面に手をつけるが


「鳥千甲万・りゅう!」


避けたはずの2本の剣撃は、勢いそのままに戻ってくる


狙うは両腕二の腕────いや違う、2本とも肘だった


俺はすぐさま地面につけた手のひらに力を入れ、バク転の要領で後退する


刃先が皮膚を掠める程度に済んだ


「やっと、届いたようじゃな…”破壊英雄”よ」


「そうか……そうかい、良かったなジーさん」


大戦あの時から腕を磨き、血肉を絞り、骨身を削った甲斐あったものじゃ…」


それ肉体残ってるのか?


「んじゃやめるか?老後は五体満足のまま逝きてぇだろ?」


「そうじゃな……────」


玄爺は地面に手を付きながら姿勢を低く、剣鉈を構え、俺を目標に見据え、呟いた


「あと1つ、どうじゃ?」


本気マジなんだな?どうなっても知らねぇぞ」


最初の移動に目が慣れたか、次に懐に入る玄爺の移動速度は速かった


目が追いつかず、判断の遅れた俺は1発ほど牽制の意味で撃った


的はずれな場所に撃ったので、玄爺は見向きもせずに俺の足元に来る


鯉昇こいのぼれ!」


いつの間にか逆手に剣鉈を持つ玄爺は、俺の脛に剣鉈を刺すと一気に上体に持っていこうとする


油断大敵とはこのことか

俺は刺された、脛に、



────


「なっ!?」


「見事だった、玄龍寺 翁よ」


俺は玄爺の本名を言い、賞賛した


脛に力を込めることで、剣鉈はそこから動かなくなったのだ


「人間、蚊に刺された時に、刺された場所に力込めると…その場から動けなくなる。その要領だな」


「クソッ!規格外め…!ワシは蚊か!」


剣鉈の材質は悪くない

俺の腕をほんの少し切っただけで上質な鋼鉄で打たれたのがわかるった

その武器を扱う腕も申し分無い

血肉を注いだ技術だと分かる


だが────


「この世界からすれば玄爺、お前は中の上だ、上の下の域に来れば股座まで届いていただろうな」


俺はショットガンに込められた弾丸を抜き、ゴム弾を込める


「寝てろ、店の上客を殺すほど俺は非情じゃねぇ」


ドン!と音ともに射出されたゴム製の弾丸は、見上げる玄爺の眉間にぶち当たり、気絶を余儀なくされる


「またのご来店、お待ちしてますってな」


──────────────────


『……血、出てますよ』


「────知ってる、感傷に浸ってんだよ。次なんか言ったら殺す」


それ以降、クロは何も喋らなくなる


俺は黒い紙に巻かれたタバコを1本取り出し、口に咥え火をつける


「……」


ニコチンを吸い、白色の二酸化炭素を吐き出す


「……ふぅー……」


剣鉈の刺さった両の脛を見遣り、感傷に浸る


大戦の発端は『メイン』の暴徒化だった


世界の融合程度で”俺たち”は干渉はしないのだが、この世界の最先端を行く『メイン』の連中が、世界の支配、そして別世界への干渉を可能にした情報が入り、俺こと黒獅が緊急で派遣されることになった


来た当時は異形の人種達によるテロが悪化し、元々居た人種達が抵抗するも虚しく、追いやられていた状態だったのだ


その時の俺は、この世界最高レベルで派遣されたため、『メイン』のリーダー金龍ティアに目をつけられるという結果になった


しかし、リーダーの思想平和は部下には届いていないのが当時の現状だった


集めた仲間が即席ゆえかは、俺の知らぬとこだったが、『メイン』は好き放題させてくれたので、西から東に、東から西へと繰り返しながら『メイン』の連中を殺さない程度にボコボコにしてやった


殺意こそないものの、俺の行動は他者ティアから見れば蹂躙と言っても過言ではない


故の封印、今となっては無駄になったが…俺は金龍を信じ、世界を見守ることにした


『メイン』は崩壊し、残党メンバーが『サブ』を結成した時が、俺は金龍直属の配下タバコ屋となったのが始まりだったか


今となっては懐かしい話だ


…よくもあの金龍ババア、俺をてい良く使ってくれたな



俺は重い腰を上げ、歩き出す

目指すは地下鉄だ


「あー……そうだ、拠点タバコ屋………はぁー……」


拠点は、本音を言うと、何とかなる


だが、シロを電脳世界に閉まったままなのだ

パソコンごと『ウェルシア国』に移動したとなれば、奪還をせざるを経なくなる


『救出作戦ですね!』


「いや、そうだけどな?俺が呼ぶまで黙っとけよクロてめぇ」


『だってシロが囚われの姫になってるんですよ!?助け出さないと!』


「うるせぇー…分かってるよ、んな事……正直クロだけじゃ物足りねぇしな」


両手に、口元に煙草を咥える姿は俺のスタイルだ


だが、片手に花、片手にタバコでは俺の違和感が拭えない



──────────────────


脛に刺さったままの剣鉈と共に、地下鉄入口に着くと『ウェルシア国』行きの切符を買い、自動改札機に通し、切符を機械から奪い、電車に乗る


朝のラッシュ時なら満席御免となる電車の全車両も、お天道様が真上にある昼頃となると人はまばらだ


電車内で居合わせた乗客たちは俺の顔を見るなり、渋い顔をし始める


「なんだコノヤロー」


『多分ですけど、狼頭が原因じゃないです?』


”破壊英雄”の象徴である黒い毛並みの狼頭は、それはそれは目立った


『ウェルシア国』とは俺の住む『ハルバード国』と友好国で、隣接し合ってる


電車に乗り、数分待てばすぐ国境を超えるほどの近さだ


だが、その数分前に問題が起きる


『マスター、私は『ウェルシア国』についてあまり知らないのですが』


電車内で棒立ちの俺は、クロに『ウェルシア国』の詳細を求めてきた


「ウェルシア国は魔法と科学が進みまくった先進国でな……もう数秒か?まぁ待ってみな」


クロは俺に勧められ、数秒待った


すると、青い透明な壁が前方から押し寄せる


『なんですかコレ?』


「無賃電車してる奴がいねぇかの認証システムだ、あと暴れてる奴がいたりしたら赤色に変わったりするんだ」


『へぇ〜……──これ、私も認識しますかね?』


「…………あ」


通り過ぎた透明の青い壁は、緑に変色する

すると俺の声と同時に、座席の下から、腰までの高さ程の”ガーゴイル”もどきが複数出現した


『このガーゴイル、小さいですね』


「成体のガーゴイルだと、電車に収まりきらねぇからな…『ウェルシア国』産の”リトル・ガーゴイル”ってやつだ」


ちなみに座席の下から湧いて出てきた理由は、転送魔術式が組み込まれた超小型装置が設置してあり、大きさ関係なし、デメリットなしでその場に出現することが可能な代物だ


『降りた方がいいんですかね?』


「クロだけな、お前の切符ねぇし」


『酷くないです?!あわわ、どんどん近づいてますよ!』


クロは、俺の陰に隠れるように服装をマントへと変形させる


白いワイシャツにスラックスの俺は、背中になびくマントを背負った格好となったのだ


「……超ダサくねぇか?」


『何とかしてくださいよマスター!』


《お客さま、切符を拝見させてください》


なんと、リトルガーゴイルが喋ったではないか


「お前ら喋るのか」


《おや、これは失敬…”破壊英雄”様にも分からないことがあるのですね。これはリトルガーゴイルの喉に設置されたマイクから発言していまして》


「そうか、お前は誰だ?」


《『ウェルシア国』の駅長総括を努めさせております》


「名乗らねぇのは気に入らねえが、まぁいい。俺はどうすりゃいい?」


《切符の提示を、貴方様はおひとりのように見えますが…生体反応はお二人分でしたので》


「電車が止まってるが、ダイヤに乱れは?」


地下トンネル内の景色は暗く、電灯がチラつく程度だ


これだと昼か夜かもわからん


《あります。なので、二人分の切符が無ければご降車をお願いします》


『マスター!降りませんよね!シロのことが大事ですもんね!!』


「降りよう、他の客にも迷惑だしな」


《ご乗車、ありがとうございます》


『なんでえええええ!?』


俺が電車から降りると、乗客を乗せた電車はそのまま進み出す


「クロ、俺は座席に転送魔術式の超小型装置があるって言ったな?」


クロはマントから黒い着物の狐耳幼女に変身する


「うぅ…ハイソーデスネ」


「まぁ聞け、俺が暴れて電車乗っ取って、そのまま電車が進むとしてもだ────」


「……なんです?」


「客が死ぬ」


「……私が大戦中に見たマスターは、そんなのお構い無しでしたよ?」


「……ま、まぁ、だからな?迷惑かけずに進む方法って言えば──」


《”破壊英雄”様?帰り道は反対方向ですよ?ええ、徒歩でお帰りください。祭太鼓の音なんかは聞こえませんのでご安心を》


「聞こえてたまるかそんなもん、それに俺たちは帰らねえよ!」


『マ────ぶッ!』


俺は何か言いかけた黒い幼女狐耳の顔面をを拳で正面から殴り、鼻腔まで拳を突き抜け、頭部内で手のひらを開き、一掴みできる頭部を握りつぶす


「”マグナムリボルバー”!」


《ッ!各リトルガーゴイル!戦闘た────》


「おせぇ!!」


装填なしの、”破壊”の想いを込められた魔力弾を撃つ


クロが変形する銃

メリットは初回装填なし

デメリットは次の装填は手動ということ


それ以外は、装備する者によるリロード不要の魔力の有無ありなし


有無だけで、弾に上限はない

魔力があればあるほど、強くなる



初回6発、全弾をリトルガーゴイルの眉間にぶち込むと、生命活動を停止した


やはり──


「──脆いな、作りが甘すぎる。無理に小型化リトルにしたから、一匹一匹に込める防衛魔力が不足してやがる」


《そ、そこまで見抜かれますか……ですが、こちらはどうです?》


死んだはずのリトルガーゴイルの首元から発言があると、次に飛び出てきたのは本物のガーゴイルだった


そう壁からだ


地下鉄の、トンネルの、壁だ


「おいおい、器物損壊じゃねぇの?」


《無銭乗客から搾り取りますので、ご安心を》


『え、え?!なんでぇ!?』


ちなみにクロの声は俺にしか聞こえない


「そうかい、だが宿主は俺だから、結局は俺から絞ろうって散弾だな?」


《何も言わずとも、わかってくれるだけでも幸いですね。ガーゴイル!行きなさい!!》


駅長の声を聞いてガーゴイルは、俺に向かって飛び付いてくる


「悪ぃが遊びに付き合ってらんねぇな」


俺はしゃがみ、玄爺から貰った脛に刺さった剣鉈を1本抜き、ガーゴイルが俺の眼前に来た瞬間、跳躍し、上段構えから地面に向けて振り抜いた


ガーゴイルは見事、縦に真っ二つに裂けるとそのまま沈み込むように地面へ突っ伏した


《なんと……女王陛下直々に生成された代物をいとも容易く…》


「なんだと?ふざけたこと抜かすなよ駅長」


《ふざけてはいない!先のガーゴイルは私の目前で生成されたのだ!》


俺は思考した


まず俺が知ってる『ウェルシア国』の女王陛下が、こんな空っぽの木偶の坊を作り上げるはずがない


「…駅長、現国王は何代目だ?」


《先代は先週、病に伏し、今は二代目のシニ様が務めておられる。》


闘技大会中か?俺が知らねぇのも無理ねぇが…二代目の名前は聞いたことがない


「適当なこと言って俺を欺くなら…駅長、てめぇの目ん玉ほじくるぞ」


《では両眼を賭けて言わせてもらう、現国王はシニ様だ》


「じゃあ、先代の娘はどこいった!!」


《……?何を馬鹿なことを言う、二代目のシニ様はだぞ?》


俺の聞きたかった答えとは別の答えに、怒りが湧き上がるのは十分だった







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こちら、しがないタバコ屋です 黒煙草 @ONIMARU-kunituna

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