第2話 サンドイッチ

「猫を飼うと思うことにしたわ」


 おかあさんがまたおとうさんの話を始めた。

 今日のお客さんは、お向かいのおばさん。相手は違えど話題は同じだ。


「猫だなんて言ったら、ご主人、可哀想じゃない」


「そうかしら? だって、来週からは一日中家に居るのよ? そうでも思わないとやってられないわ」


「わからないではないけどね。ずっと居られたら食事の世話とか手を抜けないし」


「そうなのよ。あの人、自分じゃなんにもしないから、朝昼晩三食でしょう? 食べるもの煩いから気を使うし偏食だし、もう何食べさせたらいいのかわかんないわ」


 朝昼晩三食か。オレの飯は、朝晩にカリカリと水出したら、あとは置きっぱなしだぞ。同じ猫っていうわりにゃあ、待遇が違い過ぎだろう。


「でも、毎日いるようになったら少しは自分でやるようになるんじゃないの?」


「おとうさんが? まさかぁ! あの人ったら、電子レンジひとつ使えないし、冷蔵庫すら自分で開けないのよ? この間なんて冷蔵庫にハムとチーズの買い置きあるからパンに挟んで食べてって何度も言ってから出掛けたのに、帰ってきたら、テーブルにコンビニサンドの空袋が散乱してたんだから。せめてゴミ箱にくらい捨ててくれればいいのにねぇ……」


おとうさんの名誉のためだ、ここは正直に。


『わりぃ、それやったの、オレだ』


 おかあさんの顔を見上げて膝に両手をかけた。


「いちー、どうしたの? お腹空いたの?」


 通じねえよなそりゃそうだよな……。でも、まあいいか、ついでだ。


『飯食うから、フリカケ、追加してくんね?』


 おかあさんが、ちらっとオレの飯碗を振り返った。


「またフリカケだけ食べちゃって! 好き嫌いしないでちゃんと全部食べなさい」


 なんでこういう話だけ通じるんだろ? わけわかんねぇ。

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猫を飼う いつきさと @SatoItsuki

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