第9話 魔導士の闇
その豊満な魔導士とララが対峙している。
「私はアルマ帝国皇帝警護親衛隊隊長のララ・アルマ・バーンスタインだ。お前は誰だ?」
「私はキキ。キキ・アトラ。大昔にサナートを追われた魔女の一族よ。帝国には恨みがあるの」
「その話は聞いたことがある。2000年以上前の事だろう」
「そう。2000年以上前の話。でも、故郷を追われた一族の苦悩は計り知れないの。あの国、サナートは私たちの聖地であり故郷なの」
「聖地を追われた民族の話などそこかしこにゴロゴロしている」
「貴方に何がわかるっていうのよ!」
「わからないさ、貴様らの心情などな。結局、改宗するか出ていくかの選択を迫られた。そして貴様らは出ていった」
「共存する道だってあるはずよ。今、暮らしている国は寛容なの。宗教で差別されることはない。あなた達とは大違いだわ」
「私が悪者にされてしまったな」
「皇室の人間は極悪非道なのよ。もう変えようがない醜悪な性質だわ」
大声で叫びまくるキキだった。その剣幕にサユナは怯えララの後ろで震えていた。
「キキと言ったな。貴様の怒気でこの娘は怯えまくっているぞ。初対面の人物に対してもう少し気を遣ったらどうだ」
「関係ない。目玉に住む土人の事なんてどうでもいいのよ。私は今、貴方たちに復讐したくてウズウズしてる。めちゃくちゃにやっつけてやるんだから」
「なるほど。では何がしたい」
「お前を裸にひん剥いて縛って吊るして鞭でたたいて爪を剥ぎ針を刺し皮を剥いで塩と辛子を塗り込んで目玉をくり抜き舌を切って口を耳まで裂いて10時間正座させてやる」
「落ち着け。一度にそんな沢山の事ができるわけないだろう。何だ。私と決闘がしたいのか」
「決闘なんてするわけがないでしょう。一方的に拷問してあげるだけよ」
「!?」
その時、サユナがララの首を絞めてきた。キキに操られているようだ。目の焦点は定まらず、開いた唇からは涎を垂らしていた。
「引っかかった。擦れてない土人を支配するのは簡単だ。ひゃははは」
キキはララの方へとゆっくりと歩く。その懐から一本の赤い針を取り出してララの目の前で振る。
「これで支配の絆を縫い付ける。貴方は私の奴隷になるのよ。大丈夫、さっき言った痛い事はしないから。まあ、飽きちゃったらやっちゃうかもだけど。ふふふ」
キキは、右手に持ったその赤い針をゆっくりとララの鼻へと近づける。
「鼻から脳に赤い糸を通すの。これで縫い付けるともう逃げられないわ。帝国最強戦力を思いのまま操れるなんて、もう感激だわ胸が震えちゃう!!」
キキは唾を吐きながら興奮して喋っている。そしてその赤い針をララの鼻に刺そうとするのだが、その瞬間ララの姿は消えていた。
「何処へ行った。テレポートなのか。この化け物!」
「人の事を化け物呼ばわりするな。お前の方がよっぽど化け物じみてるぞ」
ララはキキの後ろにいた。自分の首を右手でさすりながらあくびをしている。
「貴様は身長152㎝、体重は69kg、BMIは30ちょっとか。標準体重より+20kgほどで肥満度2。運動不足だな。もうちょっと痩せろ」
「私の体重なんて関係ないじゃないの。もう怒ったわ。ここらあたりを焼き尽くしてやる」
キキはそう言って両掌を組み合わせ人差し指を立てる。何か呪文を唱えようとした瞬間にララのキックが
キキは盛大に嘔吐し意識を失った。
ララはサユナを助け起こし頬を軽くたたく。
「サユナ。大丈夫か」
サユナは目を開きララに抱きついた。
「よくわからないけど、ものすごく怖かったです」
「もう大丈夫だ。怖くないぞ」
「あ、あの人どうしたの? やだ、嘔吐してる」
「気分が悪くて倒れたみたいだな。介抱してやってくれ」
「わかりました。村の人呼んできます」
サユナは集落へと走っていった。
ララは吐しゃ物にまみれて倒れているキキを見ながらつぶやく。
「この地雷、どう処理すべきか……な」
ララは一人でにやついている。厄介なサイコ魔導士をどう扱うのか。ララは考えあぐねていた。
「先ずは脱がせて洗濯だな。コイツはミサキ姉さまに任せよう」
集落から来た人たちと一緒にキキを抱え上げ担架に乗せる。キキはそのまま集落へと運ばれていった。
宇宙の運送屋 暗黒星雲 @darknebula
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