第2話
「ここにお婆ちゃんが居るんだよ?」
「天国にいるのに?」
「この時だけ天国から戻ってくるの。見えないかもしれないけど、そこにいるのよ?」
「そうなんだ」
僕はお婆ちゃんが天国になんて行っていないことは既に分かっていた。だって、今も家でお茶を飲んでいるのだから。
僕と一緒に部屋で寝てくれるお婆ちゃんは天国には行ってない。今日も「お留守番しているから、行っといで」と声をかけてくれた。
お母さんとお父さんはその事に気づいていない。普通にご飯も一緒に食べているのに「つまみ食いしたな?」と言ってこちょこちょされる。
そんな生活にも慣れて小学生になった。相変わらず毎年お墓参りに行っているが、僕は毎年謎が深まるばかりだ。「なんでわざわざ行くの?」と聞くと、「おばあちゃんに会いに行くためよ」という。何度同じことを聞いたことだろうか。毎日あっているはずなのに誰も知らないという。
「お婆ちゃんって、誰にも見えてないの?」
「お前さんには見えてるじゃないか」
「お母さんとかには?」
「それはね、私が居なくても大丈夫だからなんだよ」
「まだ僕のところには居てくれる?」
「うん。まだ居てあげるから、大丈夫だよ」
お婆ちゃんはいつもと同じように頭をなでてくれる。小さな頃からお婆ちゃんのこの行動は僕を落ち着かせてくれる。
そんなある日―――
「大事なことをお前に伝えておくね。私はあと5年しかここに居られないんだ。お前さんと話せるのは最後の願いだったからなんだ。どうか、お前の好きなように生きて欲しい・・・・・・そう思ってここに居るんだよ」
そのときの言葉を理解するにはまだ幼すぎた。その言葉の意味を考えながら5年が過ぎようとしていた小学6年生の冬。外には雪が積もり、沖縄では桜が咲くころ。俺は学生服を着ていた。
そう―――
卒業式だ。お婆ちゃんはこれが見たかったのだ。俺が学生服に身を包んだこの姿を。
「立派に成長してくれてありがとう。これで私は心置きなくさよならが出来るよ」
「お婆ちゃん・・・・・・?」
「さぁ。雲の上へ連れてっておくれ」
「只今をもって、最後の願いを叶えました。こちらにお乗りください」
「それじゃあね。上からいつでも見ているから。元気でいなさい。約束できるかい?」
「うん。最後の約束。絶対守る」
「ありがとう・・・・・・」
そして空へと続く他の人には見えないエレベーターに乗って行ってしまった。
しかし俺は笑顔だった。なぜって?
―――雲の上ではお婆ちゃんが見守っているから
あの空の上で 囲会多マッキー @makky20030217
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