第19話 現れた者

ロングソードを構えたシャインの前に勢いよく飛び出して来たのは1匹の白い犬であった。

 

 予想外の#生き物__犬__#の登場にシャインは固まり沈黙が起こる。しばしの間続いた沈黙をその犬が破った。

 

 「…………わふっ!!」

 

 犬は鳴き声を鳴らすとシャインに飛び付いた。立ち上がるとシャインの肩ほどあるその犬はシャインを押し倒し顔をぺろぺろと舐め始めた。

 

 「おい…やめっろって!くすぐったい!」

 

 シャインは逃れようと手足をバタバタしやっとの事でその犬から抜け出した。犬は遊び足りないと言ったように尻尾を激しく振りながらハヤトを見上げたりくるくるその場を回ったりしていた。

 シャインはその犬の一瞬の隙を付きタカシのいる下流に向けて走り出した。しかしその犬は一瞬の後走り出しすぐさまシャインに追いついた。犬はシャインを再び押し倒しまた顔を舐め始めた。しばらくもがいていると下流から馬に乗ったタカシが来て押し倒されるシャインを見ながら呆れた様に言う。

 

 「お~い、何しとんのや。遊んでる場合ちゃうで。」

 

 そう言うタカシに対しシャインは犬に舐められ続けながら言う。

 

 「いいから……たす……助けて……早く……。」

 

 タカシはやれやれといった仕草を見せながら犬を後ろから抱き上げた。

 開放されたシャインは犬のよだれでベタベタになった顔を横の小川で洗い流す。

 

 「なんなんだ、こいつは。」

 

 「なんやろな……俺も見た事あらへんしな……せや、女神さんからもろたスキル使ってみぃや!」

 

 タカシにそう言われシャインは手で空を切った。現れたウィンドウにはあの女神様からの手紙がついていた。

 

 「やぁやぁ、3つのスキルは私からの餞別だよ!役立ちそうな物を選んでおいたよ。スキルのレベルが上がると出来ることが色々増えるから頑張ってレベルをあげてね!」

 

 シャインはそう書かれていた手紙を取りスキルの欄を確認する。ウィンドウには新たに4つのスキルが追加されていた。

 

 [スキル]

 【鑑定Lv.1】

 指定した物・生物を鑑定する。レベルが上がるにつれ鑑定できる物・生物が増える。

 【修理Lv.1】

 壊れた物を修復する。レベルが上がるにつれ修理できる物が増える。

 【錬金術Lv.1】

 様々な物質を錬成することによる様々なものを作り出す。レベルが上がるにつれ錬成出来るものが増える。

 

 

 増えたスキルを見ながらシャインは早速【鑑定Lv.1】をタップし対象をタカシの持つ白い犬に合わせた。するとシャインの頭の中には電子音の様な声が鳴り響いた。

 

 『【鑑定Lv.1】を実行します……………………………鑑定終了。結果を表示します。』

 

 電子音の声がそう告げるとウィンドウが反応し画面が切り替わった。

 

 【鑑定結果】

 ファングウルフ亜種(幼体)



 

 シャインはそう表示された画面を反転させタカシに見せる。

 

 「ファングウルフって聞いたことないな……でどうするんや?周りに親もおらんみたいやし連れて行くか?俺は全然いいで~。このモフモフたまらんしなぁ~。」

 

 そう言いながらタカシは抱き抱えているファングウルフの背中に顔を埋めて頬をすりすりしている。しかしファングウルフはそれが嫌だったようでタカシの腕をすり抜けシャインの後ろに隠れた。逃げられたタカシは悲しそうに叫ぶ。

 

 「なんでやぁぁぁ!モフモフさせて~な~!」

 

 そう叫びながら近づくタカシにファングウルフは一層シャインの小さな陰に隠れる。タカシはバッとシャインの陰に隠れるファングウルフに抱きつこうと飛び込んだがひらりと躱された。

 

 タカシは諦めずもう1度飛びかかった。一瞬躱すと思われたファングウルフは身を翻しタカシに向けて飛び上がった。そしてタカシの額に向けて思いっきり前足を叩き込んだ。

 

 タカシは軽々と吹き飛ばされ地面に叩きつけられたのであった。

 

 

 

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雑魚ですが魔剣を担いで生き抜きます 光矢 優希 @karameruexz

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