第4話 諸葛孔明が自分をたとえるのにつかった管仲とその思想

 三国志の有名な軍師といえば、諸葛孔明(諸葛亮、字は孔明)です。


 孔明はよく「自分の才は管仲・楽毅に比す」といっていました。


 この管仲という人物ですが、孔子よりも前の人物で、「管子(管先生)」ともいわれています。


 春秋時代の斉の国の宰相で現実主義者。


 統治には法の厳格さと物資の充実が必要であり、それをせずに礼や徳などと精神的なことをいっても民はしたがわない、と説きました。

 

 これらの考えは「衣食足りて礼節を知る」の語源にもなり、管仲を法家の始祖とする人もいます。


 斉は周王朝のころ、封土として太公望にあたえられた土地です。現在の山東省あたりです。


 塩や金銀がとれることから、管仲はこれらの採掘や生産に力を入れ、斉を経済的に富ませました。


 さらには民を「牧民」「畜民」と呼び、為政者に飼われている存在とし、法によってコントロールしなければならないことを説いています。


 この考えに対する後世の批判は多く、とくに儒者からは反発されていました。


 また管仲は階級制度の必要性を強く主張し、人に序列をつけなければ国は混乱するとしました。


 管仲の階級の考え方は、カースト制度的なものというよりも、職業的な役割をはっきりさせるといったものといえます。


 農民は農民、商人は商人として、それぞれ自分の役割を果たして国を支えるといった感じでしょうか。

 

 ただ職業に貴賤はないというわけではなく、管仲の考えでは士大夫が一番上、そのつぎに農民、商人、工人という「士農商工」の順になっています。

 これはのちの「士農工商」の考えにつながっていきます。


 管仲の思想はこのように政治的な冷徹さがあったことから後世での批判も多かったのですが、それと同時に法家や為政者などからは支持されていました。


 政治には現実に対応するため冷酷な面もありますので、そのあたりのバランスは政治家たちの悩みの種といえますね。

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