これは果たしてホラーなのだろうか。うすら寒いものを感じるのは私だけでしょうか。
いつもながら丁寧な文章力に引き込まれ、長さも気にならず、じっくりと読み進めていました。
父の死がさりげない伏線となって、医療技術の進歩で死ぬことさえままならない世界になったことが分かります。
そしてAIにはおよそ似つかわしくない芸術品を取り扱う画廊が舞台、AIの目覚ましい進化に結婚不要、高級ダッチワイフに思いを馳せた私のような愚昧な読者もいたでしょう。
しかし、事態は徐々に、そして、閑かに不審な方向に進んでいきます。そこには有りうべからざるものがありました。
一体、これから先、未来はどうなっていくのか。人類の終焉か、はたまた、新時代の魁か、作者の問いに答えられる者はいません。
早く死ねて、お父さんは幸せだったかも、……最後にそんな言葉が心の中にリフレインしてきます。