02
二仁木月読は日本刀で異形を斬るのだが、帯刀してはいない。
二仁木月読はあいも変わらず刀を手にせず、簡易的な基地を足音も立てず、それでいて、優美な早足でほうらい塚へと向かって行った。
ほうらい様とやらがいる場所をもうすでに察知していて、脇目も振らずに向かっているように皆には見えていた。
「二仁木月読には何が見えているのでしょうかね?」
加賀良光が矢頭勇利にそう問いかけると、
「……月読は神と約定をかわしているのだろう。だから、相手が見えていても不思議ではない。人の目では見えないものも、神の目では見られるのかもしれん」
そう言ってから、傍にいた鬼灯歩雷を見やる。
「……はいはい。魔眼でちゃんと偵察しておきますぜ。あの嬢ちゃんも死ぬかもしれませんしね」
おどけた風に言うも、鬼灯は月読が死ぬとは露とも思ってはいなかった。
矢頭勇利が口にした『神との約定』であれば、相手がなんであれ、約定を守っていさえすれば死ぬ事はないと分かっていた。
あくまでも『神との約定』であれば、の話ではある。
神との約定は絶対であり、その約定を果たすまでは死ねない。
死ぬ事さえ許されないというべきなのかもしれない。
死にそうな状況、あるいは、死んでしまっているような状態であったとしても、黄泉路から無理矢理引き戻されて、生きる事と約定を守る事を強要される。
約定を果たすまでは安らかなる死さえ得る事を不可能な、理不尽や契約で合ったりすることが多いのである、神との約束事は。
「……それにしても、気になるのですよね。二仁木の言っていた『斬るのは、あの者で良いのですか?』という言葉が、どうしても引っかかるのです」
「……おそらくは、他にも何かいるって事ですぜ。荒巻三兄妹が来るなら、その辺りの心配はしなくてもいいじゃないですかね」
荒巻三兄妹は退魔師業界で有名な奴らで、三兄妹が通った後は敵味方の屍が数多築かれると言われているほどの者達であった。
関わり合いになりたくないと思っている者は数知れず。
だが、実力はそんじょそこらの八百万の神様と同等という話さえあり、一目置いている退魔師も多いのも事実である。
「おやおや、月読の嬢ちゃん、立ち止まりましたぜ」
会話をしながらも、魔眼で二仁木月読を偵察していた鬼灯歩雷が嬉々として口にした。
「……始まったのか?」
矢頭勇利が興味ありげに言う。
「おそらくは……」
鬼灯歩雷は魔眼の能力に集中すべく、自分の世界にこもり始めた……。
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