間宮 倫太郎(まみや りんたろう)
01
「わしに待機しろだと? バカにするにも程がある!」
調査団のメンバー達の制止に聞く耳を持たずに、
「ふんっ! ほいらい様だか、ほうらい様だか知らんが、わし一人で十分だ。他に奴らなど出る幕なぞないわ」
そう豪語し、ほうらい塚へと単独で向かったのであった。
間宮倫太郎は巨岩を連想させるほどの大男である上に、武蔵坊弁慶を真似てか、僧兵のような服装をしていて、その巨躯の圧巻さも相まって立っているだけで周囲を威圧できるほどである。
間宮倫太郎がギロリと睨んだだけで、その眼光の鋭さの故に格闘家であろうとも立ちすくむと言われているほどだ。
そのためか、妙に自信があって、過信しすぎているとも言えなくもない。
だがしかし、それは根拠のない自信などではない。
間宮倫太郎はほうらい塚へと続く、突貫工事に近い道の前に立ち、その先を軽く睥睨した。
「さて、行くとしようか」
ある程度の距離までは草木が刈られ、人一人が通れるくらいの道ができているので、どっしりと構えつつも、周囲を警戒しながら歩を先に進める。
「首斬りか何かの類いか?」
道なりに進むと、一体目の首のない死体が倒れていた。
間宮倫太郎はその死体の前で立ち止まり、身を屈めてその子細を確かめた。
「ふむ、血が出ていない? 吸血の類いか?」
鋭利な刃物で首を切断されているようで、冷凍の肉をスライスしたかのように首の断片がはっきりと残っていた。
鋭利な刃物でスパッと斬ったのではなく、斬った事さえ相手に悟らせないほどの斬撃であったのが想像に難くはなかった。
それほどまでに見事な刀裁きであった。
しかも、血が飛び散っておらず、首を斬られてもなお生きているかのような印象がある。
「妖刀の類いで斬られたと想定すべきか」
血を抜かれているのかもしれないと思い、間宮倫太郎はかがみ込んで死体をまさぐってみると、そのような痕跡は一切見つからない。
血の飛散させることなく首をはねるなど、人の技でできるものではない。
「……ふむ……」
間宮倫太郎は死体の首の断片に人差し指を添えて、スッと横に流した後、人差し指を離すなり、指先をペロリと舐めた。
「体液と微量の血に混じるは、微かな妖気……。やはり妖刀の類いか。抵抗しようとした痕跡は見られない。つまりは不意打ちで首をはねられたか」
間宮倫太郎はのっそりと立ち上がり、周囲を警戒するように見回した。
「気配を断っているのか?」
化け物の禍々しい気配は周囲にはない。
目を閉じて雑念を瞬時に断ち、神経を研ぎ澄ます。
半径数百メートルほどの範囲に動く『何か』がいないかと探るも、やはり何者もいない。
「……ふむ。生物そのものがいないだと?」
普段ならば小動物の動きなども察知できるはずであった。
だが、どういうワケか、周囲数百メートルにはネズミの気配さえ皆無なのだ。
「……奇っ怪な ほうらい塚とやらは生物が住めない場所だというのか? それとも……」
間宮倫太郎は言いかけていた言葉を呑み込んで、
「愚か者めが! わしに不意打ちなどきかぬわ! わしの鋼鉄の身体は断ち切れる刀など存在せぬ!」
間宮倫太郎はカッと目を見開き、仁王立ちした。
ニヤリと不敵に笑い、
「わしがここに来た事を呪うが良い!
その言葉によって、間宮倫太郎の肌の色が人肌から黒光りし出し、瞬く間に銅像のような外見になった。
これが間宮倫太郎は、己の身体を『黒鉄鋼の盾』という間宮家に古来より伝わる謎の鉄鉱石によって鉄の装甲のようなものに変化させる事が可能であった。
猛スピードの車に突っ込まれようとも傷一つ付かない身体となるので、どのような物理攻撃も無力化できるに等しい防御力を手に入れられるのである。
「ふんっ。たかが妖刀使いの化け物め。わしが滅してやろう」
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