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『ほうらい塚なる古墳に似た墓がY県にあるという噂を聞いた。邪馬台国に関連しているかもしれんし、調べてみる価値はあるかもしれない。調査団を結成して調査するべきではないか?』
数か月前、某大学のとある教授がそんなことを言い出した事により、急遽Y県の片田舎にある『ほうらい塚』の調査が決定した。
その教授はその大学だけでなく、学界にもそれなりに権力があり、逆らったが最後、その大学どころか特定の学界にさえいられなくなる危険性があったため誰も逆らいはしなかったので、その調査が撤回される事はなかった。
その数日後に、調査団が結成された。
ほうらい塚について、まずは伝承などが収集されるとすぐさま、ほうらい様という怪異が存在しているにたどり着くこととなる。
古墳の調査などを行うようになると、化け物やら怪異やらに関わってしまうのは多々あることであった。
それが故に、調査を円滑に行うために怪異やら化け物を退治する『退魔師』を雇って、化け物退治して調査を円滑に行う事が通例となっていた。
そういったことが行われているなどということは暗黙の了解で口外してはならないことであったし、化け物の存在などをまだまだ認めてはいない以上、事が済んだ後は『なかった事』とされるのもまた慣例であった。
その調査団が決済された段階で加賀良光はメンバーの一人として参加が決定していた。
加賀良光の退魔師ゴロとしての才能を買われたと言っても過言ではなかった。
退魔師ゴロの加賀良光だけでメンバーが決定するわけでもなく、他にも決定権のあるメンバー六名の過半数が賛同すれば決定されるため、一人だけが反対してもあまり意味はなかったりする。
今回の調査団に同行する退魔師として、最初にあがったのは、二仁木月読であった。
「二仁木月読は確かに有能な退魔師ではあります。しかしながら、癖がありすぎる上にお金がかかりすぎる。私はあまりあの女を推薦したくはない」
加賀光良は二仁木の名前が出るなり選考から外すようにそう意見を述べた。
二仁木月読は、五千万から一億の金さえ積めば、どんな神であろうが何であろうが一刀両断する事で知られる凄腕の退魔師として業界では名が通っていた。
そのためなのだろう。
調査団の旗振りを務めている教授が二仁木の名をあげたのだ。
「彼女は優秀という話だが」
退魔師選考役の一人がそう反論した。
「二仁木月読はその件に関わっている化け物を一体しか倒しません。どんなことがあろうとも、さらに金を積んだとしても、一体しか倒さないのです。化け物が複数の場合は役に立たない事この上ない」
加賀良光は知っていた。
二仁木月読は、誰かとかわしたという約定によって、その件に関わっている『何か』を一体しか斬れないのだという。
約定を破れば、その件に関わっている者たちすべてが不幸になるという。
「そのため、二仁木月読はこう仲間内からこう呼ばれているのです。約定縛りの破戒巫女、と」
「今回は、ほうらい様とやら一体を倒せばいいだけではないのか?」
メンバーの一人がそう言った事で他のメンバーが首肯し出し、反対したのは加賀良光のみという結果に終わってしまった。
その結果が自分が現場にいない間に、先行していた元自衛官ら六人との音信不通であった。
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