加賀 良光(かが よしみつ)

01



 携帯電話から流れてきた部下からの報告を聞いて、加賀良光かが よしみつは愕然とした。


「ほうらい塚までの道を切り開いていた六人と……連絡が途絶えた?」


 これまで退魔師ゴロとして多くの調査団に同行し、今回の調査にも同行する事となった加賀良光は、問題児である二仁木月読を懇意にしている退魔師二人と迎えに行った事を後悔した。


 現場に着きっきりでいるべきであったのかもしれない、と。


『……はい』


「ほうらい様とやらがもう出現したというのか?」


『分かりません。ですが、その可能性が高いとしか言いようがありません』


 ほうらい塚にたどり着く前に『ほうらい様』と遭遇する事は想定外であった。


 塚のすぐ傍までは大丈夫だろうと楽観視していた事が裏目に出るとは思ってもいなかった。


「そっちにいる退魔師の先生は……間宮先生か」


 今回のほうらい塚の調査には、四人の退魔師が同行している。


 神であろうが何であろうが、金さえ積めば一体のみを必ず屠る『約定縛りの破戒巫女』こと、二仁木月読。


 鋼の肉体を持つ武闘派退魔師である間宮倫太郎まみやりんたろう


 虚無僧のような格好をしてはいるが実際は魔眼の使い手である鬼灯歩雷ほおづき ぶらい


 そして、こちらも虚無僧の格好をしているが、実際は陰陽師である式神使いの矢頭勇利やず ゆうり


 この四人がいれば、どのような化け物がほうらい塚にいたとしても退治できると確信している一流どころのメンバーでもあった。


「間宮先生には、我々が到着するまで動かないよう言っておいてくれ。すぐに行く」


 それだけ言って、加賀良光は電話を切った。


 呑気にも地元の家に上がり込んで朝食を食べていた二仁木月読を忌々しげに見やった。


 二仁木月読は矢頭勇利、鬼灯歩雷の後ろをのんびりと歩いており、遅れてきた上に迎えに行かなければならなかった事を悪びれた様子さえ見せてはいなかった。


 そんな二仁木月読が加賀良光は忌々しくて仕方がなかった。


 二仁木月読を採用するのは最後まで反対すべきであった、と加賀良光は心の中で悔みながらも、加賀良光は調査団がいる場所へと急ぐことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る