第49話 分裂系講師
入会式翌日に一日休養日があった後、新人ヒーロー達が朝から集められた。
訓練が始まるのだ。
「皆おはよう。昨日ゆっくり休んで疲れは取れたかな?」
梗が爽やかな笑顔で皆に尋ねる。
『………………』
半数以上が疲れた顔をしていた。
一日休んだ位では疲れが取れなかったらしい。
「うん、皆元気みたいだね。よかった。じゃ、訓練を始めようか」
『………………』
今いる場所は、島の中心にある大きな建物の会議室だ。
時期的にまだ学生陣の学校が始まる前なので、朝から新人ヒーロー達全員がいる。
学校が始まったら学生陣は学業優先で、訓練には放課後から参加する形となる。
「まずは座学だけど。皆、居眠りしないようにね」
訓練初日の午前中は休憩を挟みつつ、ずっと座学だった。
基本としてまずは今皆が住んでいるこの星、地球について。
人類の歴史というよりは、星そのものの歴史や、地球の環境についてなどが語られた。
その後食事休憩を挟み、午後は実技の訓練となった。
施設内の通路の途中にある、少し広い空間に皆が集められている。
「さて、午後は実際に体を動かしての訓練になるんだけど……」
「しーつもーんでーす」
「はい、田中さん。何ですか?」
話の途中で手を挙げたのは、宇宙兵器を転送して戦う宇宙人の少女、田中花子だった。
「ご飯食べる時に必要だって言われて使ったこれ、気になったんだけどー、このカードに入ってるポイントってなんですかー?」
手に持った一枚のカードを振る。
それには顔写真と名前が入っていた。
「ヒロカのポイント? ……説明一回したよね? あと皆の家に送った資料に詳しい説明書いてなかった?」
「聞いてないでーす、読んでないでーす」
「あー、そう……。他の皆は? ポイントについて何の事だかわからないって人いる?」
『………………』
手を上げるような明確なアピールをする者はいなかったが、表情を見れば明らかに理解していなさそうな者が何人かいた。
「そっか……。じゃあもう一度簡単に説明するから聞いてね。詳しくは皆が持ってる筈の資料に書いてあるからそれを読んで。無いって人は後で言って。説明が見られるURL教えるから」
梗の説明によると、この島内では現金の使用が出来ないようになっているらしい。
その代わりに使用するのが花子の持っていたカードで使用する、ポイントというやつだ。
ポイントは訓練を受けるとその受けた時間分加算される。
ちなみにこのポイントは給料とは別に支払われる物なので、協会がお金を出すのを渋ってポイントで誤魔化しているわけではない。
「訓練以外にも俺が訓練用に用意したダンジョンを探索をしたり、大会に参加して上位に入ったりと色々ポイントを稼ぐ方法は用意してあるから、詳しくは資料の内容を確認してね」
パチンと手を叩く。
「さ、気を取り直して訓練だ」
そう言って通路の奥を指すと、そこにはいくつものドアが見えた。
「入り口のセンサー部にそのヒーローカード、ヒロカを当てて。ヒロカを押し当てる事で個人を特定してその人用の訓練場に繋がるようになってるから。ここにあるどのドア使っても同じだから順番に中に入っちゃって」
「しーつもーんでーす」
「はい、田中さん。何ですか?」
花子が頬に指を当てる。
「別々に訓練場に入るって事はー、個人個人別々で訓練するって事だよね? じゃあ講師は誰になるの?」
「講師? 勿論俺だよ?」
「ん?」
「ん?」
二人が同じタイミングで首を傾げる。
「あ、そうか。田中さんは知らないのか」
梗が何かに気付いたらしく、得心が行った顔になる。
「俺、こういう事も出来るんだよ」
そう言ってちらりと視線を右に向けると、彼の後ろからもう一人の梗が現れた。
左に視線を向けると、そこに更にもう一人。
「ね?」
「ありえなーい」
知っていた者もいたみたいだが、ほとんどがその光景をギョッとした顔で見ていた。
「というわけで。さ、皆中に入っちゃって」
色んな異世界が結合して混ざり合ったカオスな地球で三年前まで戦隊ヒーローやってました 草田章 @kusada
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