第2章 屍竜の守る村
第35話「回復薬系は寿命の前借り的な」
遥か頭上に広がっているのは、雲一つない青空。
爽やかな青に染まる空の下を、スケットン達は並んで歩いている。馬車が通れるようにと手入れされた道は、山道と比べるとずいぶんと歩きやすい。往来する馬車もなく、人の姿も見当たらない。
そんな中、スケットン達は竜の守る村オルパスを目指していた。
彼らの当初の目的は村ではなく、その付近にある世界樹だ。けれど、ここ数日のシェヘラザードとの戦いや、屋敷での戦いで、体力も道具もだいぶ消耗してしまったため、いったん村で準備を整えようという話になったのだ。
「相手の戦力はどんなもんでしょうねぇ。ルーベンスさんレベルがうようよですか?」
「へぇ、そいつは楽できそうだ」
「どういう意味だ」
ルーベンスがスケットンをギロリと睨む。相変わらず仲の悪い二人である。
「まぁまぁ。でも、休憩自体はありがたいですね。
「ああ、確かアレか。
「的な。
「そ、それは物騒だな……」
ルーベンスがひくっと喉を鳴らす。
味は置いておいても、とても便利なものだ。だが便利と言う言葉は、ある種のリスクも孕んでいる。
つまり、薬で誤魔化しているだけで、根本的な疲労は残るのだ。多用すれば、いくら体力や魔力が回復したとしても、体の方がついてはいかない。
その結果で最悪なのが死である。
「人の手が入りゃあそんなもんだろ」
「人間というものは昔から何一つ変わりませんからね」
「お前はまた見てきたような事を」
スケットンが半眼になって言うと、ナナシは目を瞬いたあと「そうですね」と苦笑した。
「つーか、俺、そういうの必要ねぇし。ついでに言うと休憩も必要ねぇし? 休憩がしたいならお前らだけで行けよ。何なら俺様だけ世界樹に向かうからよ」
「はぁ。まぁそれでも構いませんけれど、レベルドレイな私と離れたら、スケットンさん最弱ですよ」
「ばっかお前、離れねぇような範囲で村に入って休憩しろよ」
「村から世界樹までどれだけの距離だと」
そこまで行ってナナシは顎に手を当てた。
「そう言えば、世界樹とはどれくらい離れているんでしょうね?」
「知らん。そんなもん、歩けば見えてくるだろ。世界樹はでけぇんだからよ」
「それもそうですね」
「いや、確かにそうだが……君達、色々アバウトすぎないか?」
二人のやりとりにルーベンスは頭を抱えた。
「そうですか?」
「何とかなりゃあ別にいいだろ」
「それは、そうだが……」
何とも言えない眼差しを向けるルーベンスに、スケットンは「ケッ」と悪態を吐き、ナナシはこてりと首を傾げた。何をしても「何とかなる」という確信をしているスケットンやナナシを見ていると、きっちりと調べた上で決めて進めたいルーベンスは不安になるのだろう。
「せめて私が共にいる間は報告、連絡、相談の一連の流れを持つ事を提案する」
「ほうほう、巷で話題のほうれんそーですか」
「巷で話題なの?」
「さあ」
自分で言っておいて、ナナシがしれっとそう答える。スケットンは「こいつ、こういう所あるよな」と半眼になった。
「では練習をしよう。まずは報告!」
だがしかし、ルーベンスはのりのりに話を進める。肉体言語派のノリである。
「歩くのに飽きた」
「それは報告ではない! というかだから最初に馬車で行こうと誘ったではないか! 次、連絡!」
「お腹が空きました」
「それも連絡ではない! 村まで我慢したまえ! 次、相談!」
「どうしたらルーベンスが黙るか」
「黙らない!」
結局、報連相は要相談という事になった。話し合いにならなかったとも言う。
そんな調子でオルパスへと歩いていると、ふと、スケットンが足を止めた。
「どうしました?」
「いや、あそこに何か倒れてんぞ」
そう言ってスケットンは道の先を指差した。
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