もし“秘密兵器”が出陣したら(三人搭乗ver)
戦場は混乱と悲鳴に満ちていた。
突如として降り立った、たった1機の漆黒の機体に、社長候補達の配下による軍は蹂躙されていたのだ。
「何だあの機体は!?」
「次々と潰される……!」
「離れろ、正面から攻めるな!」
「そうだ、背後を取れ……! 後ろからならいける……!」
連絡を受け、一斉に背後に回り込む社長候補の機体群。
漆黒の機体は反転しようとするが、正面に残った機体が陽動の攻撃を始めた。
(……)
搭乗者は正面の敵を機体両手の大剣で屠りながら、大量の視覚情報を整理し始める。
(正面には12機。その程度ならすぐに殲滅出来るんだが……)
「
「勝手に叩き落すわよ、兄卑……!」
美しいソプラノと若いソプラノの二種類の
「わーってるよ、ヴァイス、シュシュ!(背中は預けた……頼むぜ!)」
視界内の敵に集中し、大剣を構える。
「どいてろ……!」
切っ先から
元々大した防御力を有さない機体群など、的に過ぎなかった。
飛びついた機体は、各々の得物を突き立てようとしていた。
「この位置ならば、効きはせずとも……!」
張り出た箇所に飛び乗り、挙動を予測する意図があったのだろう。
だが。
「いくわよ、シュシュ!」
「ええ、お姉様!」
ヴァイスとシュシュが、機体に魔力を込めた。
「ッ!? うわああああああッ!」
1機が、突如として現れた左手の腕に握り潰された。
「おい!? がっ! や、やめ――」
もう1機も同様に、奇襲してきた腕に握り潰される。今度は右手の腕だった。
「どうなっている!」
「わかりません、けれど腕、腕が……!」
「腕だと!? クソッ、下がれ……」
「まだありますわよ? うふふ」
「遠慮なさらず、持って行きなさいな」
更に魔力を込めるヴァイスとシュシュ。
「何だ? マントが……」
「早く離れろ……なっ! 伸び――」
マントの布地を押しやって迫るモノ。
「がっ!?」
その正体は、隠れていた2本の腕だった。
「さあ、潔く……」
「散り逝きなさいなッ!」
圧倒的な握力と全長30m以上のマントを通り抜けられる長さまで伸長する腕は、瞬く間に漆黒の機体の背面に取り付こうとした2機を握り屠った。
「やっと集中出来るぜ……!」
陽動部隊を全滅させた龍野は、機体へ急激に魔力を送り込む。
一気に距離を取り、視界を広める。
(ヴァイス、それにシュシュによれば、後方に敵はいない……! なら……!)
「龍野君、一気に片を付けて……!」
「おうとも!」
漆黒の機体は大群に対して正面を向くと、隠した腕で、マントで隠された剣4本を1本ずつ掴む。
そして最初から出している2本の腕と合わせ、計6本の剣の切っ先を全て正面に向けた。
「邪魔だ……。そこをどけぇえええええええッ!」
魔力を限界まで凝縮させ、切っ先から極大の
軽く100機を超える機体を、たった一薙ぎで全滅させたのであった。
「第一陣はこれで終わりか……」
「そうね。けれど、まだまだ数はいるわよ」
シュシュの声が響く。
「“彼女”を助け出す為には、これ以上の無茶をしてもらうわ。
龍野を“兄卑”と言い放った声は、若々しいソプラノだった。
「知ってるぜ……まったくもう。一体どれだけ召喚したんだかってぇ……のッ!」
漆黒の機体を跳躍させ、マント裏の翼状ブースターに充填した魔力を一気に噴射する。
「けどよ……もうワケのわからねえ別れは、ごめんだぜッ!」
充填した魔力でアイバイザーを、そして他の発光部位を二色に輝かせながら、漆黒の機体――エェルケーニヒ・シュヴァルツリッター――は、先ほど以上の数がいる敵機群の中に突っ込んで行った。
龍野とシュヴァルツリッターの力 有原ハリアー @BlackKnight
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