エピローグ「ふたりぼっちのペンギンのアイドル」

 マゼランペンギンは飛び出していた。

 寮の部屋から、ただ夢とは違って。

 彼女が写真を手に部屋をあとにしたから追う番。

 だけど水際、そこにいた彼女は。

 お姫様じゃなく成ってて。

 どうしてここに来たのか分かってない様子。

 それでも海を見ていた。

 お姫様の描き足された写真が海に流され沈むまで。





 マゼランが見た夢というのは。

 お姫様に憧れるセルリアンに成るという物。

 だけど目覚めた方の現実は。

 そんな上手くいかなくて。

 ……フルルとしてPPPをやる話はなかったことに。

 そう告げられてショックだったのと。

 正直ホッとした感情どっちも呑み込めず。

 なのに謝罪に来たミライに対して。


 『どうしてミライさんが謝るの、ミライさんが留めてくれたんでしょ?』


 とか、サービス精神いい子ぶっちゃってまぁ。

 本当の“i”は何処にある?


 『いえ、ロイヤルペンギンさんに言われてしまったんです。初代の幻想に囚われてもしょうがない、と。』


 それこそ言われたくなかった本音の筈。

 それも部外者でしかない彼女からの。

 でもミライの顔は何処か吹っ切れたそれで。

 それが羨ましかったから。

 彼女と部屋で二人っきりに成った時話したという訳。

 夢のこと、そして現在に至る。


 「――それが異なる未来の貴女だからといって、今の貴女が生きない理由に成る? かぁ……。」


 ロイヤルと別れて一人図書室にて思い返す。

 夢に驚きもせず言い残すだけ言い残した彼女。


 「酷いお姫様、ただ自由に生きることが一番苦しいことなのに。」


 意味があって初めて思える。

 生きてもいいのだと、だからこその考える葦は。


 「――それは、遥か遠い昔のことでした。」


 自己満足の物語を紡ぐ。


 「パークではヒトとフレンズが、仲よく楽しく遊んでいました。」


 いつか終末を迎える世界でも。


 「しかしある日、そこに怖ろしいセルリアンが現れたのです。」


 図書室に在り触れた内容でも。


 「パークの真ん中で我が物顔のセルリアン、なんという忌々しい奴でしょう。」


 一人のセルリアンが諦めず望んだこと。


 「所がそんなパークに、誇り高き五人の戦士達が現れたのです。」


 だけど一人だと寂しいから。

 在り得た歴史の続きにはこう記す。





 見事セルリアンを倒し戻って来た戦士達。

 けれど彼らの中にお姫様はいませんでした。

 世界のことを一番に考え続けて。

 なのにセルリアンを倒さなかったお姫様。

 ……これから貴女達が生きる時代に。

 道標は邪魔でしかないから。

 そう残し名前も捨て、そして海の底へ旅立った彼女。

 ……私は思う。

 それに対してけじめを付けたとか無責任とか。

 そんな意味を求めるのはナンセンスだと。

 だから写真に委ねることにした。

 海の藻屑と成るのが目に見えても。


 『でなきゃ私は貴女に“イース”なんて送ってないわ。』


 それもまた一興だ。


 『だって歌って踊るなら、貴女とがいいと思ったから。』


 海の底、星の記憶と繋がる海底火山にて。

 ふたり組のペンギンアイドルは笑いましたとさ。


 「めでたしめでたし。」


 それで音読を終える。

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プリンセス・ナンセンス 図書記架 @tosyokika

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