今は亡き文明へ
@yumeno_ato
第1話
「惑星探査機46号、着陸完了しました。」
数時間ぶりに発した声は少しばかり掠れていた。しかし問題なく向こうへ届いたようで、ノイズまみれの返答を受け取ると国指定の探索スーツを身につけて僕は探査機の扉を開けた。
砂、砂。どこまで行っても白い砂が広がっている。シャリシャリと踏み心地こそ良いものの、帰還した土産が砂だけでは艦長達にまた研究費が、人員が、と愚痴を吐かれてしまうだろう。新しいエネルギー源を他惑星から見つけ出す、これが僕の使命だ。この星へ来てまだ数分だが、またハズレのようだということはよく分かった。探査機から発せられるGPSが届く範囲はもう少し広いはずだ。時間はまだまだあるし、このだだっ広い空間を探索しても成果は無さそうだがとりあえず進めるだけ進もうと思う。
砂、砂、そして石。先程から五分ほど歩くと足元に石が混ざり出した。石といっても、小指の爪サイズのものから岩といっても過言ではないような高く見上げる大きさの物まで様々だ。まるで巨大な岩壁が崩れ落ちたかのような断片に指を当ててみる。もちろん何も感じなかった。
コツン、と足に何かが触れる感覚がした。
膝を曲げて拾い上げて見る。綺麗な鉱物だ。
この星は熱の惑星なのか、着陸時から感じてはいたが尋常ではない強さの熱線が降り注いでいる。そんな中でも形を失わない鉱物だ。もしかしたらエネルギーとして活用できるかもしれない。眩しすぎて直視出来ない熱線も、スーツのお陰で問題なく見上げることができる。その鉱物を透かしてみれば透明な体に光が刺さって、とても美しく輝いた。決めた、コイツを土産一号にしよう。たとえ活用出来なかったとしても彼女へのプレゼントにしよう。もちろん危険性がないか検査を通した後でだが。
もうしばらく進むと、本格的に岩だらけの地帯に入った。右も左も見渡す限り岩。そしてよく見るとその岩の所々に何か丸を変形させたような3つのマークが彫ってあった。これは何かの発見に繋がるかもしれない。というか鉱物とこのマークだけでもかなりの発見ではないだろうか?降り注ぐ熱線にスーツも限界を迎えそうだ。額を落ちてくる汗を拭うこともヘルメットのせいでできやしない。僕は岩達に背を向けて探査機へと歩き出した。
こんなマークを発見しました、と艦長達へ報告すれば少しばかりは驚いてくれたらしく、即行解析班へと回してくれた。鉱物は後で現物を渡せばいいか。僕は解析を待つ。
解析が終わったようだ。艦長が妙に興奮した口調でまくし立てる。
どうやらさっきのマークは、この惑星で使われていた文字らしい。随分と昔に滅んだ文明のようだが、文献は残っていたそうだ。
彼方此方に同じ文字を記すなんて不思議なことをするものだ、何か深い意味でもあるのだろうか。僕は艦長に、その文字にはどんな意味が?と尋ねた。艦長はまた興奮気味に話す。
「これはこの文明の熱線への最期の抵抗を示した文字だったらしい。惑星全体でその文字を模範として活動していたようだ。まぁ結局は滅んでしまったがな。」
そんなに重要な文字だったのか。僕は少しばかり嬉しくなった、まるで世紀の大発見でもしたかのようで。今は亡きこの文明に感謝しなくては。
モニターに映し出されたその文字を指でなぞる。
「eco」
この三文字に、一体どれほどの意味が込められていたのだろうか。
今は亡き文明へ @yumeno_ato
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