4-3話 姉を誰が殺したのか知るために来た。
小泉クルミ(9)は、授業時間中ではあったが、新学期がはじまってからほぼ勝手に仲間になったトオルという子、つまり飛行機事故で亡くなったトオコと瓜二つの女装男子の校内限定公開プロフィールに目を通していた。
「前はどこにいたの?:ニューメキシコ州のサンタ・フェ近郊。今はどこ?:六本木ヒルズ。趣味は?:読書と映画鑑賞、か」
あまりうまい嘘つきじゃなさそうだなあ、とクルミは思った。安心すると同時に少しがっかりしたが、次の質問と回答に、クルミの目はかなり大きくなった。
「なんでこの学校に転校してきたの?:姉を誰が殺したのか知るために来た。」
姉を誰が殺したのか知るために来た。
姉を誰が殺したのか知るために来た。
姉を誰が殺したのか知るために来た。
大事なことなので三度確認して、クルミは椅子から立ち上がった。その音がけっこう大きかったため、横に座っていた江戸川ミナト(3)はびっくりした。
「何があったのだ?」と、ミナトは言ったので、クルミは左隣りのトオルに気づかれないように、携帯端末の画面を見せた。
「それかあ。当人に聞いてみろよ。ていうか、画面スクロールしてみな」
「というのは嘘です。姉は新学期は諸用により少し戻るのが遅くなるとのことで、代理を頼まれました」
「えええっ、トオコって死んでないの?」
「別に生きてるよ。今アメリカだけど。ネバダ州のなんとかってところだし。『新SNSはじめました』って通知、夏休みのはじめにもらったはずだよな、なー、みんな」と、向かいの席の内田フタバ(2)が言い、フタバの隣の源氏イハチ(8)もうなづいた。
トオルは何やら調べものにものすごく集中していて、みんなの話を聞いていないようにみえた。
「そんな件名の通知なんて毎日来るよ! スパム通知と紛らわしすぎ」
「ああ、ちょうど昼休みだ。それについては別のところで話そうじゃないか」と、ミナトは言った。
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