16話 うーん、これは回収する方法と、放擲するボールの数の問題かな
黒沼ナナコ(7)
つよさ 5
かしこさ 1
まりょく 3
大岡シロウ(4)
つよさ 4
かしこさ 3
まりょく 4
「30分もプレイできないなんて、何なんよその機械は!」と、ナナコ(7)は、テニスコートの真ん中でラケットをシロウ(4)のほうに向け、オレンジ色の髪の毛をかきあげて怒った。
シロウが作り、調整をしたテニス練習用のマシンは、3人のウィッカーマン並みの大きさがあり、ナナコが打ち返すテニスボールを、ネットの上に展開する81の光学的グリッドによって解析し、スピードと方向をはかって、適度な強さで打ち返す。正確には、はじき出す。マシンはナナコによって打ち込まれたボールを回収する技術を持たないため、シロウの側のテニスコートはもう、黄色いボールだらけである。
「うーん、これは回収する方法と、放擲するボールの数の問題かな。技術的な面に関してはイツカ(5)と相談してなんとかする。ボールを4倍にするか、サポートの球拾い要員を何人か確保できるといいんだけど。一応事情を説明すると、第二次大戦のパイロットは、片道3時間、往復6時間飛行して10分間しか戦闘できなかった。どうしてかというと弾薬や爆弾がなくなっちゃうから。その戦闘機・爆撃機を整備するのに、1機につき5人の整備士による8時間の整備が必要だとする。24時間戦闘状態が保てるようにするには、飛行機は5機1編隊として何機必要?」
「……え、え、えっと、そういう難しい話はしないでよ。えーと、8かける3は120割る5だよね? 1万機ぐらい?」
体育館の東側に設けられた旧テニスコートにはがんがん、9月の朝日が当たっていた。
イツカはアイスボックスから冷えた飲み物(ただし冷えすぎてはいないもの)をいくつか取り出し、そのうちの1本をナナコにわたすと、残りのうち2本を自分で手にした。
今日も熱くなるんだろうな、と、ふたりは考えた。
再び壁打ちをはじめたナナコと、機械の整備と後片付けをしていたシロウの、ちょうど視覚の影をきらきらの、なにか偽天使らしい美しい造形のものが通り過ぎた。
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